債務の一部弁済と抵当権

担保物権が、債務の弁済を確保するものであることはもちろんですが、その弁済の方法には、例えば一定の時期に一定額の分割弁済をするという方法もあります。その場合に、もし弁済された金額に応じて、目的物の一部について担保物権の拘束を免れようとすると、担保物権の効力は弱くなります。そこで民法では、留置権について、それが一たび設定されると、留置権者は債権の全部の弁済を受けるまで留置物の全部についてその権利を行使することがでぎるものと定め、これを抵当権等に準用した担保物権のこのような効力を不可分性といいます。

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民決三七四条は、抵当権の被担保債権の範囲について、抵当権者か利息其他の定期金を請求する権利を有するときは其満期と為りたる最後の二年分に付てのみ共抵当権を行うことを得、と規定していますが、これは抵当権者と他の債権者との関係、つまり優先弁清の範囲を定めるものであるために、債務者や目的物の第三取得者は、利息とか損害金とがの全部を弁済しなければ抵当権を消滅させることはできません。根抵当権者の現存の債権額が極度額を超えている場合、根抵当権を消滅させるために弁済すべき全額は、現存債権額か極度額かについて争いがあり、判例では、物上保証人または第三債務者が極度額だけ弁済したのでは一部の弁済でしかないとしていましたが、昭和四六年新設の民法三九八条ノ二二では、極度額を弁済すれば根抵当権の消滅を請求できるものと規定されました。
債務者が、例えば一口の債務1000万円について、600万円の甲土地、400万円の乙土地および200万円の丙土地にそれぞれ抵当権を設定し、その後500万円の弁済をしたようなときにも、抵当権は不可分であるために、債務者は、甲土地または乙および丙土地について、抵当権の消滅を理由としてその設定登記の抹消登記手続を求めることはできず、債権者は全部の土地について競売の申立をすることができます。ただし債権者が弁済を受けられるのは残金500万円のみであるために、この点からすれば、甲の土地のみ、または乙および丙の土地を換価すれば足りるものということができます。したがってかような場合、債権者が甲の土地のみ、または乙および丙の土地について競売の申立てをすることができることはいうまでもなく、また一部弁済について争いがなく一部の土地を換備すれば十分であることが明らかなとき、裁判所は民事執行法一八八条、七三条により過剰競売を許さないとすることもできます。
債務者が、一部弁済を理由として競売開始決定の一部取消を求めることができるかどうかについては、裁判例も分かれていますが、多くの裁判例では、抵当権の不可分性や任意競売開始のとき債権額の確定を必要とすることはこの手続と相容れないなどの理由で、これを認めていません。競売開始決定を争いえないとすると競売手続はそのまま続行されますが、債務者は、配当手続が行なわれればその際異議を述ペ、配当異議の訴えを提起することができます。また債権者がすでに競売代金を受領しているときには、債務者は二重に弁済した全額について不当利得の返還請求をすることになります。
例えば保証人が抵当債務の弁済をしたとき、保証人は債権者に代位してその抵当権を実行することができますが、その弁済が被担保債権額の一部についてなされたのにとどまるとき、抵当権の実行は、代位者、保証人が債権者に優先してできるのか、債権者が優先するのか、それとも両者は平等なのか、この点については、ローマ法以来争われたところであり、日本の民法では、代位者は其弁済したる価額に応じて債権者と共に其権利を行う、と規定されています。この規定の解釈について、判例では、一部の弁済をした保証人が弁済額についての代位権行使として任意競売の申立をした事案で、代位行使する、権利にして分割行使を為し得る場合に於ては債権者と共同することなく各自其の割合に応じて各別に之か行使を為し得る趣旨、なりとし、競売の申立を是認しました。古い学説でもこれと同旨のものがありました。しかしこの解釈をとると、第三者が一部の弁済をしたとき、債権者は、債務者が一部弁済をしたときに比べて著しく不利益となります。それは前者の場合債権者は担保権の不可分性から設定当初のままの抵当権を有するのに反し、後者の場合だと債権者は担保物の処分を強いられることになるからです。とりわけ、被担保債権が分割払債権の場合には、債権者の残存債権はまだ弁済期が到来しないため自ら抵当権を実行することがでぎないのに、代位者は単独で抵当権を実行して優先弁済を受け、このため債権者は将来抵当権の実行がでぎないことになってしまいます。
このような点から通説では、一部弁済による代位者は単独で債権者の権利を行使できるのでなく、債権者の権利行使に付随して債権者と共同してのみ、その権利行使をすることができるのであり、代位者は債権者が損保権の行使によって未済残額の満足を得た後に、はじめてその求償権の確保として担保権によって満足を受けうるものと解し、代位制度の目的からいってこの解釈が妥当であるということになります。

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