抵当権の消滅原因

抵当権は、金銭債権を担保するものであるために、金銭債権の存在しないところに発生せず、一旦発生した抵当権は被担保債権の消滅とともに消滅します。もっとも根抵当権は、被担保債権がなくなったというだけでは消滅せず、新たな債権が発生する可能性がなくなり、そのうえで被担保債権が消滅してはじめて根抵当権も消滅します。金銭債権は、債権者がこれを放棄もしくは債務免除し、債務者が弁済、代物弁済、供託もしくは相殺し、または消滅時効にかかると消滅しますが、最も代表的なものは弁済です。
しかし抵当権が消滅するためには、被担保債権の全部についての弁済がなければなりません。利息や遅延損害金についても、最後の二年分のみでなく、その全部についての弁済がなければなりません。金銭債権は代替性に富むために、第三者丁が弁済することもでき、この場合にも本来債務は消滅することになるのですが、丁が債権者甲に代位する場合には、弁済によって債権および抵当権は消滅せず甲から丁に移転するものと考えられています。しかし丙が乙の債務について自己所有の不動産に抵当権を設定し、丁がこの債務の免責的な引受をしたときは、この抵当権は、丙の同意のないがぎり消滅し、丁に対する抵当権とはなりません。

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抵当権は不動産の経済的価値を確保するものであるために、例えばその目的となっている建物が火災で焼失したり、土地が取用されたようなときには、抵当権もまた消滅します。ただし債務者がその建物焼失による保険金や土地収用による補償金の請求権を取得したような場合には、抵当権者はその払渡前にこれを差し押えて自己の債権に対する弁済とすることができます。建物が倒壊して木材になったときとか、山林から立木が伐採されたときについて、判例では、債権者が抵当権実行に着手し差押の効力が生じた後ならばこれらに抵当権が及びますが、その前は抵当権が及ばないとしています。
工場の抵当にあっては、抵当の目的である土地と一体をなしている機械器具が抵当権者の同意を得て分離せられたときは、その物に対する抵当権は消滅しますが、同意のない場合は、譲受人に即時取得が成立する場合を除いて、目的物が第三者に引き渡されても抵当権はこれに及びます。
抵当権者甲が目的物の所有権を取得したときには、抵当権は混同によって消滅します。しかし後順位の抵当権者乙があるときには甲の抵当権は消滅せず、その場合甲は抵当権者として目的物を競売し乙に優先して自己の債権の弁済を受けることもでき、また第三取得者として乙に対して滌除をすることもできます。
債務者または担保提供者以外の者が、抵当不動産を担保権の設定がないものとして占有し、取得時効によってその所有権を取得したときには、抵当権はこれによって消滅します。取得時効は原始取得であるために、抵当権のような負担の付着しない所有権を取得するものです。債務者や担保提供者が除外されるのは、これらに時効取得を認めることが信義用に反することになるからです。
抵当権は、地上権または永小作権を目的として設定することもできますが、この場合抵当権設定者が地上権または永小作権を放棄しても、抵当権者には対抗することができません。したがって抵当権者は、それらが放棄されたあとでも抵当権の実行ができます。権利の放棄もこれによって第三者の権利が害されるような場合は許されないので、民法三九八条は当然の規定といえますが、判例では、この規定を類推して、抵当家屋についての借地権を放棄した場合、または借地契約を合意解除した場合、借地権の消滅を抵当権者に対抗できないとしています。
抵当権設定契約が解除されたり、意思表示に瑕疵があるため取り消されたりすると、抵当権は当初に遡って消滅します。ただし、これを第三者に対抗できないことがあります。抵当権設定契約が詐害行為として取り消される場合も、抵当権は当初に遡って消滅します。抵当権設定契約に解除案件が付されているときは、条件成就によって抵当権は消減に帰します。ただしこの場合解除案件が登記されていないと、その消滅をもって第三者に対抗することはできません。
甲が自己の抵当権を実行し、不動産が競売されると、甲の抵当権はその目的を遂げて消滅しますが、この不動産に他の債権者乙の抵当権があるときには、乙の抵当権も同時に消滅します。乙の抵当権が甲のそれに優先するとき、乙は甲より先に配当を受け、劣後するときは甲よりあとに配当を受けます。甲の抵当権が設定されている不動産が、一般債権者乙の申立によって強制競売に付される場合にも、甲の抵当権は消滅します。
強制競売は、最低競売価格をもって甲の抵当債務および手続費用を弁済してなお剰余がなければ許されないために、甲がつねに乙に優先して弁済を受けることはいうまでもありません。
乙が甲のために抵当権を設定している不動産の所有権または地上権を丙が買い受けたとき、丙が甲の要求によってその代価を甲に支払ったときには、抵当権は丙のために消減することになります。丙は乙の意思に反してでも、この弁済をすることができます。甲は、被担保債権額が目的物の価額を超えるとき、その差額を、一般債権者として乙に請求することになります。この例で、丙は、目的不動産を適宜に評価し、この評価額を甲に弁済して抵当権の消滅を請求することができます。甲がこれを拒絶するには直ちに競売をすることを要し、その際もし評面額の10分の1以上の増価で競落する者がないときには、甲みずからその増価額をもってこれを買い受けなければななりません。
根抵当権によって担保される元本債権は、確定期日の到来、継続的取引の終了等によって確定しますが、現存債務額が根抵当権の極度額を超えるときには、物上保証人、第三取得者は、極度額相当額を抵当権者に払い渡し、または供託して、根抵当権消滅の請求をすることができます。この請求権は形成権であり、その意思表示をすれば抵当権は消滅します。
抵当権も一つの権利として、被担保債権とは別個に消滅時効にかかるといえますが、債務者や抵当権設定者が債務の弁済をしないで抵当権の消滅時効を主張することは信義則に反するので、民法は、これらの者に対しては被担保債権と同時でなければ、抵当権は消滅時効にかからないものとしています。したがってこれ以外の者、例えば後順位抵当権者や目的物の第三取得者に対しては、抵当権は、20年の消滅時効によって債権とは別に消滅することになります。

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