物上保証人の求償権

物上保証人が債務を弁済したり、その負担する担保権が実行されて担保物の所有権を失ったとき、つまり物上保証人の出捐のもとに債務者が免責されたときは、物上保証人は、保証債務に関する規定に従って、債務者に対する求償権を取得します。物上保証人は、第一に、出捐金につき債務者に対し求償権を取得し、第二に、右求債権を確保するために、求償権の範囲において債権者がその債権について有する担保権その他の権利を取得します。

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債務者の委託を受けて物上保証人になった者の出捐額によって債務が消滅した場合における求償権の範囲は、出捐額、弁済その他の免責行為のあった日以後の法定利息、避けることのできなかった費用その他の損害の賠償である多少の説明を加えると、出捐額とは、弁済の場合は弁済額であり、担保権実行の場合は競売代金額になります。もし、競売代金額が債務額を上回っていたため物上保証人が剰余金の返還を受けたときは、それを控除した額になります。弁済その他の免責行為のあった日以後の法定利息とは、通常は年五分ですが、商行為としての物上保証であれば年六分になります。この法定利息は、債務者に対するなんらの通知、催告を要せずに、当然に発生します。避けることのできなかった費用、損害に競売手続費用が入ることに争いはありませんが、弁済費用、弁済のために担保物を換価するときに要した費用、その際時価より安く売却したときとか、時価より安く競売されたときにおける時価との差額になると、具体的事件では避けることができなかったものかどうかとの関連で徴妙な問題が生じます。
債務者からの委託を受けていないが、債務者の意思に反することなく物上保証人になった者の出捐によって債務が消滅した場合には、債務者が免責の当時利益を受けた限度において求債することができます。この場合には、委託を受けた物上保証人の求償権の場合のような利息、損害賠償の請求はできませんが、求債したのに債務者が支払わなかったときは、一般原則に従って債務不履行による損害賠償の請求ができることはいうまでもありません。
物上保証人になったことが債務者の意思に反するときは、債務者が現に利益をうける限度において求償することができるにすぎません。したがって、免責以後求債のときまでに債務者が債権者に対して反対債権を取得すれば、債務者はこれをもって物上保証人の求償に対抗することができます。この場合に、物上保証人は、債務者に求償できなくなりますが、債務者の反対債権は、法律上当然に物上保証人に移転し、物上保証人は、債権者に対し反対債権の履行を請求ができます。
物上保証人が債務の弁済をしたり、担保物実行の通知を受けた場合において、そのことを事前に債務者に通知しなかったときは、債務者は、債権者に対抗しうべき事由を物上保証人に主張することができます。例えば債務者が債権者に反対債権を持っていて、それで相殺できたとか、債務の消滅時効の主張ができるのに、物上保証人が事前の通知をしないで弁済したときは、債務者は、物上保証人からの求償に対し、この事由を主張して求償を拒むことができます。この場合に物上保証人の出捐金は、自己負担にならざるをえませんが、相殺の場合だけは、物上保証人から債権者に対して相殺によって消滅すべかりし債務の履行を請求することができます。
物上保証人が弁済したことを通知しなかったときは、これを知らなかった債務者が弁済すれば、債務者が自分の方の弁済が有効であると主張することができます。
物上保証人は、債務者のために弁済することにつき正当の利益を有する者であるために、弁済によって当然債権者に代位します。これを法定代位という。民法五○○条には、弁済に因りて、とありますが、弁済だけでなく、担保権の実行によって担保物の所有権を失った場合にも法定代位を認めるのが、判例通説です。代位があると、物上保証人は、債権の効力及び担保として其債権者か有せし一切の権利を行なうことができます。つまり、債権者が債務者に対して有していた債権そのものがそのまま弁済者に移転し、もし債務者が自分の財産を担保に入れていたときは、債権者が有していた当該担保権も弁済者に移転します。ここに担保とは、抵当権、質権に限らず、実質的に担保と目される代物弁済予約、売買予約、譲渡担保等も含まれると解されます。また、債権者が担保権を実行中であれば、実行上の地位そのままが弁済者に移転します。弁済者は、代位した権利につき、債権者から移転登記または附記登記をえて、債務者に対しその担保権を実行することができます。

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