債務者の資産悪化と物上根保証人

手形割引、当座貸越等の融資関係や卸売商と小売商との間の取引等にみられる継続的取引契約から生じる債権を一括して担保する根質、根抵当権を第三者のために設定した者を物上根保証人といいます。
このような債務の保証をした者を根保証人といいますが、根保証人に関しては、判例では保証すべき取引関係についての期間が保証契約で定められていないときは、保証人は、保証契約締結後相当期間経過後に保証契約を解除でき、相当の期間を経過しなくても、債務者の資産状態が急激に悪化したり、保証人の地位や債務者に対する信頼関係に重大な変化が生じたりなど、契約時に予測できなかった特別の事情が生じれば、直ちに解除することができるとしています。

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根保証人について認められるこのような解約権が物上根保証人について認められるかが問題になりますが、これについては、最判昭四二・一・三一民集二一巻一号四三頁が継続的取引契約に基づいて生じる債務のための期間の定めのない根抵当権を設定した、いわゆる物上保証人は、その後著しい事情の変更があった等の正当の事由があるときは、当該根抵当権設定契約について、現存被担保債権のみを担保する通常の抵当権とする意味における解約告知をすることができるものと解すべきであるとしています。
例えば経営不振におちいっていた反毛業者Aは、Y銀行からの融資の枠を拡げてもらうため実兄Xに極度額を130万円とし、存続期間の定めなく根抵当権を設定してもらい、Yからの融資を得ることができましたが、Xの予期に反してAの営業状態はさらに悪化の一途をたどるようになり、Xの将来の求債権の行使に多大の支障をきたすようになったので、物上根保証後わずか一月余で、XがYに、Aに対するこれ以上の信用供与を停止されたく、もしそのようなことが続けられても、Xとしては責任を将来に向かって負いかねると告げた、というのです。そして、前記最判は、このような場合は、前記の趣旨における解約の告知をするについて正当の事由があるとしました。この事件のように、物上根保証として根抵当権が設定された場合についてみると、被担保債権に極度額があるうえ、物上根保証人は抵当不動産による物的有限責任を負うにすぎないために、債務者の資産関係が悪化したからといって、物上根保証人からの解約をたやすく認めることには問題があります。本来債権者としては、債務者からの弁済を期待できない場合のあることを考えて拒保権を取得しているのですから、肝心の財産状態悪化のときに担保権設定契約を解約されたのでは、債権者としてはたまらないし、設定者としても、本来このような場合のために物的負担を負ったのであるために、その肝心のときに設定契約を解除するというのはむしろ矛盾しています。しかし、極度額がたとえば100万円と定められていても、債権者が債務者に200万円を貸与したとすれば、物上根保証人は物件を失うことを覚悟すれば、100万円の物的負担を負うだけで足りますが、根抵当権を解消させるためには200万円を弁済しなければなりません。そこで、物上根保証人に従来の根抵当権を現存の被担保債権のみを担保する通常の抵当権とする意味における解約告知権を与えれば、被担保債権が200万円の時点で解約告知権が行使されれば、それ以後の貸増分については、物上根保証人は責任を負わず、また、債権者としては、既往の債権は担保され、それ以後の貸増を手控えれば足りるのであって、両者の利害の調整をはかりうるのです。前記最判はこのような利益衝量をその背景にもっていると考えられます。

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