物上保証人と保証人の違い

物上保証人とは、他人の債務を担保するために自分の財産の上に質権、抵当権を設定した者をいい、このような担保、または、担保設定行為を物上保証といいます。質権、抵当権に限らず、他人の債務を担保するために自分の財産につき譲渡担保、代物弁済の予約等のいわゆる非典型担保を設定した者も物上保証人と呼ばれることがあります。これに対し、保証人は、他人の債務を担保するため自分が保証債務を負担する者をいいます。

スポンサーリンク

お金を借りる!

物上保証人と保証人の違いの第一は、前者は自らは債務を負担しないのに対し、後者は自らが債務を負担する点にあります。したがって、1.他人の債務を保証するとともに、その保証債務を被担保債権として自分の財産の上に担保を設定する者は、物上保証人ではありません。これに似て非なるものとして、2.被担保債権を他人の債務とする物上保証をするとともに、同一の債務を保証することです。1.と2.の違いは、被担保債権が保証債務(1.)か、主たる債務(2.)かであり、実際上は、1.の担保は、保証債務の有効、存続が前提となるのに対し、2.の担保には、この点が要件とならないことで現れます。なお、もとより、3.他人の債務を保証するとともに、他人の債務および自己の保証債務の双方を被担保債権として自己の財産の上に担保を設定することも可能であり、実際は、この類型が多いようです。
しかし、他人の債務のために負担を負うという点では、物上保証人と保証人は似たところがあります。物上保証人は自己の債務は負担しませんが、他人の債務を任意に弁済することは妨げず、その弁済は、利害関係のある第三者の弁済として債務者の意に反してもこれをすることができます。このようにして物上保証人が債務の弁済をしたとき、または、担保権が実行されたとき、つまり、物上保証人の出捐によって債務が消滅したときは、保証人と同じく債務者に対し求償権を取得します。そして、その範囲は、物上保証人が債務者の依頼を受けて物上保証をしたかどうか等によって異なることは、保証人と同一です。そこで、民法では、保証債務に関する規定を物上保証に準用することにしています。また、物上保証人または保証人が弁済すると、いずれも弁済の利益を有する者として、決定代位することができます。その他、類似点としては、主たる債務が消滅すれば、物上保証も、保証もそれに従って消滅すること、主たる債務が譲渡されれば、物上保証も、保証もそれに伴って移転すること、さらに、物上根保証人、根保証人にあっては、その者が死亡したときに相続人が当然にその地位を承継するかという似通った間題があること等を指摘することができます。
前記のとおり、物上保証人は自分で債務を負担する者ではありません。したがって、債権者は、物上保証人に対して給付の訴えを提起したり、その一般財産に対して執行することはできません。物上保証人は、担保に供した財産の限度で責任を負担すれば足り、債権者としては、この財産だけで債権の満足をえられないときは、もはや、物上保証人からそれ以上の支払を期侍することはできません。しかし、債権者がその取得した担保権について登記その他の対抗力を得ておけば、物上保証人が当該財産を他に処分しても、債権者としては、処分にかかわり合いがなく、財産からの優先満足を得ることができます。なお、債権者は、物上保証人に対して給付の訴えを提起することはできませんが、例えば物上保証人から抵当権を取得しているときについていえば、任意競売の申立てをして同手続内で比較的容易に債権の優先弁済をうることができます。しかし、保証人は、これと異なり、自己の債務を負担する者であるために、債権者は、保証人に対し給付の訴えを提起して、その勝訴判決により保証人の一般財産に対して執行することができます。保証人の責任には限定がなく、債権者は、その債権の満足を得られるまで、支払を求めることができます。しかし、債権者は保証人の財産につき担保権を取得しているわけではないために、保証人が財産を処分すれば、もはやその財産からの債権満足を期待することはできません。
保証人は、債権者が保証人に請求したときに先つ主たる債務者に催告を為すへき旨の催告の抗弁を提出することができ、債権者が主たる債務者に対して催告をした後に保証人に対して請求をした場合でも先つ主たる債務者の財産に付き執行を為すベき旨の検索の抗弁を出すことができます。しかし、物上保証人はこのような抗弁権を有しません。したがって、債務者自らが担保を供しているときでも、物上保証人は、債権者にまず債務者の提供した担保の実行をなすぺき旨の主張をすることはできません。
民法では、保証人に主たる債務者の有する債権を自働債権とする相殺権を認め、委託を受けた保証人につき一定の場合に保証債務履行前の事前求償を認める旨の規定をおいていますが、物上保証についてはなんら規定していません。

お金を借りる!

第三者による弁済/ 連帯保証人による弁済/ 手形買戻債権の代位弁済/ 一部代位弁済/ 債権譲渡による債権回収/ 債権譲渡と代位弁済/ 個人会社の代表者からの回収/ 債権の償却/ 貸倒と財務処理/ 債務免除/ 抵当権処分の方法/ 一部抵当権の設定/ 所有者による抵当権設定/ 登記のない抵当権/ 誤った金額の抵当権の効力と是正/ 権利能力のない社団と抵当権設定/ 物上保証人と保証人の違い/ 物上保証人の地位/ 利益相反/ 債務者の資産悪化と物上根保証人/ 物上保証人の求償権/ 抵当権の消滅原因/ 抵当債務を第三者が弁済/ 債務の一部弁済と抵当権/