権利能力のない社団と抵当権設定

権利能力のない社団とは、社団の実体を有しながらも、法人格を有しないものをいい、町内会、同窓会、社交クラブその他の親睦団体、学会、設立中の会社等の団体ですが、これらの団体が権利能力のない社団であると認められるためには、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要するとされています。権利能力のない社団は、法律上権利義務の主体となりうる資格を有しないために、権利能力のない社団の代表者が社団の名において取得した財産は、社団自体に帰属することはなく、社団の構成員全員に総有的に帰属します。つまり、社団の構成員となった者は、当然にその財産につき権利を取得しますが、総会を通じてその管理に参画するだけで、持分権を有せず、社団の構成員でなくなったときは当然に権利を失います。

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権利能力のない社団の代表者が社団の名において取得した資産は、その構成員全員に総有的に帰属しているのであって、社団自身が権利主体となるわけではないために、不動産について、それが社団財産であることを公示するために社団自身の名義で登記をすることは、実体関係に符合しないことになります。不動産登記法には、権利能力のない社団に対しその名において登記申請を行ない、登記名義人となる資格を認める旨の規定がありません。したがって、社団財産である不動産について社団名義の登記をすることは、許されません。社団財産であることを公示するために、構成員全員の共有名義の登記をすることが考えられますが、前述のとおり、構成員の変動により当然に権利変動が生じるために、特に構成員の数が多く、構成員の変動がある社団の場合には、常時真実の権利関係を公示しておくために煩雑な手数を要し、実際的ではありません。そこで、従来から、社団財産である不動産については、社団の代表者個人の名義で登記をすることが行なわれています。この場合、社団財産の帰属主体である構成員と代表者との間は信託的な関係であり、代表者は、構成員全員のための受託者としての地位において、自己の名義で登記しているものと解されます。そして、この場合において、代表者個人の固有財産と区別し、社団財産であることを明らかにするために、代表者個人の名義に社団の代表者である旨の肩書を付して登記をすることは、実質において社団を権利者とする登記を許容することにほかならないために、許されません。これは、最判昭四七・六・二の説くところであり、従来から登記実務が一貫してとってきた立場です。
このような判例および登記実務の見解に対しては、有力な学者から、社団名義の登記を認めるべきであるとし、または社団代表者である旨の肩書を付した代表者個人名義の登記を認めるべぎであるとする批判が少なくありません。そして、このような学説の主張する登記が認められるならば、社団財産と代表者個人の財産とが明確に区別され、取引の安全の観点から望ましいのですが、判例および登記実務は、現在の実体法および登記手続法を前提とするかぎり、このような登記は認められないと解しているわけです。
このようにして、社団財産である不動産は、通常、社団の代表者個人の名義で登記されます。そこで、代表者個人の所有名義で登記されている不動産について、代表者が社団の名において債権者と抵当権設定契約を結んだときは、代表者個人が抵当権設定者として抵当権者と共同して登記申請すべきことになります。また、社団の代表者が社団の名において社団の債権を担保するために債務者または物上保証人とその所有の不動産について抵当権設定契約を結んだときは、社団自身ではなく、社団の代表者である旨の肩書を付けずに代表者個人が、抵当権者として抵当権設定者と共同して登記申請をすることになります。

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