所有者による抵当権設定

抵当権設定契約は、抵当権という物権の設定を直接その目的とするいわゆる物権契約であって、これにより目的物の所有権の内容の一部である交換価格の支配権能を債権者に与えるものであるために、債権者と抵当権設定契約を締結し得る当事者は、目的物の処分権能を有する者に限られます。したがって、登記簿上所有名義を有していても、実体上所有権を有しない者が抵当権設定契約を締結しても、抵当権は有効に成立しません。たとえ抵当権設定登記がされても、真実の所有者は、外形上の抵当権の抹消登記手続を請求することができます。また、この外形上の抵当権に基づいて競売開始決定がされても、真実の所有者は、民訴決五四四条の異議または即時抗告を申し立て、その取消を求めることができ、これとは別に抵当権不存在確認の訴えを提起し、これを本案として、抵当権実行禁止の仮処分を求めることもできます。さらに、競落許可決定が確定し、競落人が競落代金を完納しても、競落人は競落不動産の所有権を取得することができません。抵当権設定契約を締結した登記簿上の所有名義人が実体上所有権を有しないことを相手方当事者である債権者において知らなかったとしても、原則として、以上のことに変わりはありません。善意の債権者の不利益は甚だしいのですが、登記に公信力が認められていない以上、それはやむをえないところです。ただ、虚偽表示等の法埋により、例外的に善意の債権者が保護される場合があり得ます。

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民法九四条二項の適用例として、不動産の所有者Aが所有権を移転する意思がないのにBと通謀して売買を仮装し、登記簿上所有名義をBに移転した場合において、Bの債権者CがBが所有権を有しないことを知らずにBと抵当権設定契約を縮結したときは、民法九四条二項の適用により、Aは、所有権がBに移転していないことをもってCに対抗することができないために、Cは、有効に抵当権を取得する結果となります。
民法九四条二項の類推適用の適用例として、他から不動産を買い受けたAがBに所有権を移転する意思がないのにB名義で売主から所有権移転登記を受けた場合や、未登記不動産の所有者AがBに所有権を移転する意思がないのにB名義で所有権保存登記をした場合や、AがB名義で不動産を競落し、B名義で所有権移転登記を受けた場合等、真実の所有者の意思に基づいて不実の登記がされた場合において、Bの債権者Cがこれが不実の登記であることを知らずにこの登記によって表示されたBの所有権の外観に信頼してBと抵当権設定契約を締結したときは、民法九四条二項の法意に照らし、同条項を類推適用して、Aは、Bが所有権を有しないことをもってCに対抗することができないと解すべきであり、したがって、Cは、有効に抵当権を取得する結果となります。これらの場合において、Cが保護される根拠は、Cが信頼した所有権帰属の外観が所有者Aの意思に基づいて作出されたことに求られるのであり、B名義の登記がBの承諾の下にされたか否かにはかかわりありません。また、B名義の不実の登記が当初所有者Aの不知の間にされた場合でも、後にAが不実の登記がされていることを知りながらこれを存続させることを明示または黙示に承認していたときは、当初からAの意思に基づいて不実の登記がされた場合と同様に解すぺきです。
民法九四条二項、二○条の法意の適用例として、所有者AがDと通謀して売買を仮装し、AからDへの所有者移転登記手続をした後、BがDから交付を受けたDの委任状等を冒用してDからBへの所有権移転登記手続をした場合や、所有者AがBと通謀してB名義の所有権移転請求権保全の仮登記をする意思で交付したAの委仕状等をBが冒用してAからBへの所有権移転登記手続をした場合には、Bの所有名義は、必ずしもAの意思に基づいて作出されたとはいえません。したがって、これらの場合に、Bへの所有権帰属の外観に信頼してBと抵当権設定契約を締結したCは、民法九四条二項の適用や類推適用による保護を受けることはできません。しかし、これらの場合においても、Aが一定の外観を作出し、または作出しようとし、そのことによって結局Bを権利者とする外観を生じたために、民法九四条二項および二○条の法意に照らし、この外観を信頼してBと取引をしたCがそのように信頼するについて過失がないならば、Aは、Bの所有権取得の無効をもってCに対抗することができないと解することが、取引保護の要請に応えることになります。これらの場合にも、Cは有効に抵当権を取得する結果となります。

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