抵当権処分の方法

貸付資金を投下した抵当権者にとって、債務者からの回取実現前に、元本や利息の全部または一部に相当する金銭を調達したいことや、同一債務者に対する他の債権者との間で担保の融通をつけて協調融資をしてやりたい、といった場合に、抵当債権者の把握している経済的価値の流動化を必要とします。こうした要求に応じうる法的手段として、いわゆる、抵当権者による抵当権権処分があります。
抵当権処分という用語の概念内容には、学説上でも統一性がなく、また、民決典でいう抵当権の処分とは、抵当権を以て他の債権の担保と為し又同一の債務者に対する他の債権者の利益の為め共抵当権着くは其順位を譲渡し又は之を放棄することだけを指しています。

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民法三七五条一項の法文の意味はその文言からだけでは何のことかわりにくく、其抵当権を以て他の担保と為すとは、講説上、転抵当と呼ばれている処分方法です。同項後設は通説でいう相対的処分のことです。抵当権の云々というのは、処分の相手方が抵当権のない債権者である場合で、抵当権の順位の云々というのは、相手方が後順位抵当権者である場合、を意味します。また、い云々の譲渡ことは、処分する抵当権者の本来の優先権を相手方より後順位にくり下げることであり、云々の放棄とは同順位に並べることです。
転抵当の意義や性質は学説が分かれており、判例の立場も判然としませんが、現在の通説的見解では、例えばAに対し100万円の抵当権付債権を持っている甲が、乙に対する既札存債務または新たに乙から借入れる債務につき、乙のため債権と切り離して抵当権だけを担保として差し入れること、つまり抵当権の附従性を緩和して、原抵当権者甲が抵当目的物上に、転抵当権者乙のために再度抵当権を設定できる処分制度であると解しています。しかし、実際の利用度としては、被担保債権と抵当権をセットにして譲渡、質入することのほうが多くなっています。
設定は原抵当権者と転抵当権者との間の契約で設定され、原抵当権者の承諾は必要ありません。それゆえ、責任転抵当といいます。
対抗要件として二種の対抗要件が必要です。
登記は転抵当も物権変動であるために、第三者に対抗するには登記を必要とします。その方法は附記登記によります。同一の抵当目的物につき転抵当その他の処分が重ねてなされた場合には、その相互間の順位は附記登記の順位によります。
転抵当は被担保債権と切り離した抵当権だけの処分であるとしても、原抵当権の被担保債権と完全に無縁になるわけではないので、原抵当権の被担保債権の債務者、保証人、物上保証人たる抵当権設定者、これらの承継人との関係では、債権譲渡に関する民法四六七条の規定に従い、主たる債務者に処分を通知し、または同人からの承諾がなければ、対抗できません。
転抵当の被担保債権額は原抵当権のそれを上回ってもさしつかえありませんが、優先弁済の範囲は、原抵当のそれに縮滅されます。転抵当権の被担保債権の弁済期が到来していても、原抵当権のそれが到来するに至ってはじめて、転抵当権を実行できます。
原抵当権者の配当受領権と競売権に関し、判例は、原抵当権者の被担保債権額が転抵当権者のそれを超過するときは、超過額の範囲内で競売代金から配当を受けることができ、原抵当権に基づいて自ら競売権を行使することもできると説いています。しかし、これでは、転抵当権者の把握した担保価値を害する場合を生じるとして、反対する学説も多くあります。通知、承諾の対抗要件がそなわっていれば、転抵当権者の承諾を得ずになした弁済は、同人に対抗できません。
抵当権の譲渡とは抵当権者が、抵当権を有しない他の債権者のため、その抵当権を譲渡することで、その結果、譲渡人は譲受人の被担保額の限度で無担保となり、譲受人は譲渡人の順位と被担保額の限度で優先します。両者の中間に後順位の担保権者がいても、同人には影響はありません。被担保債権と切り離した抵当権だけの処分である点で、抵当権の附従性、随伴性を緩和してはいるものの、このような効果の相対性のゆえに、相対的処分の一つと呼ばれています。
譲渡の当事者以外の第三者の利害に影響を与えないために、債務者、抵当権設定者。中間順位の担保権者の承諾を必要としません。当事者の契約だけで成立します。
相手方は通説では、両当事者の債務者が同一人でなく、譲受人となる者が物上保証人、第三取得者の債権者である場合でも、抵当権譲渡をなし得ると解されています。
競売権は抵当権の譲渡により抵当権の実行権も譲受人に移転し、譲渡人は競売権を失い、また、両者の債権の弁済期がともに到来していなければ競売できないと解するのが通説です。
抵当権の放棄とは抵当権者が、抵当権のない他の債権者との関係でのみ、その抵当権を相対的に放棄することで、その結果、受益者と放棄者は、放棄者の有した順位と被担保額の範囲内で、両人の被担保額の割合に応じて抵当権を準共有し、それに従って優先弁済の利益を分け合います。中間に後順位の担保権者がいても、同人には影響はありません。
抵当権の順位の譲渡とは先順位抵当権者が、後順位の担保権者のために、その抵当権の順位を譲渡することその結果、対外的には両者の担保権の順位そのものが入れ替りはしませんが、両者間での対内的関係では配当の優先順位が入れ替わり、両者の本来うけうるはずの優先配当額の合計額から、先ず順位譲受人がその被担保額に達するまで配当を受け、次いでそれでも競売代金に残余があれば譲渡人がその債権額に達するまで配当をうけることになります。両者の中間に他順位の担保権者がいたとしても、同人には影響はありません。
抵当権の順位の放棄とは先順位抵当権者が、後順位の担保権者のために、その抵当権の順位を放棄することで、その結果、順位放棄者と受益者との配当の優先順位が同順位に並び、それぞれの被担保額に按分比例して配当をうけることになります。
抵当権の順位の変更とは昭和四六年の根抵当立法の際に新設された制度です。この制度は根抵当についても、そのまま認められます。抵当権者相互間で、各人が合意をなし、利害関係人の承諾を得て、その登記をなすことによって、抵当権の順位を変更することで、その結果、優先弁済の順位の変更の効果は、絶対的効力を生じ、合意した当事者や承諾した利害関係人のみならず、一定範囲のその他の者との関係でも、その効力を生じます。

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