貸倒と財務処理

一般に、債権放棄がなされる場合としては、債務者の支払能力にかかわりなくされる場合と、債務者の支払能力がない場合とが考えられます。
債務者の支払能力にかかわりなくなされる場合の放棄は、たんに債務者をして経済的に利益を受けさせることにすぎないために、債権者は債務者に対し、債権相当額の贈与をしたことになります。債権者が法人の場合はこの贈与額が寄付金として取り扱われることになります。寄付金の金額が直ちに損金として扱われるのではなく、その法人の寄付金限度額の部分についてのみ損金計上が認められ、それを超える部分は益金に算入されることになります。

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債務者に支払能力がない場合には、一般的に債権は貸倒として、損金計上が認められることになるのですが、その場合の貸倒の事実認定についての判断がしばしば問題となります。
貸倒といっても、債務の免除、債権の放棄切り捨て等によって法律的に債権が消滅する場合と、法的には債権自体は存続しているが、経済的には回収の見込がないと認識される場合とがありますが、税務では、両者の場合を含めて取り扱っています。
判例においては、貸倒の判定に当っては、債務者の資力、信用、債権額、債権者の採用した取立方法等の事情を綜合的に判断すぺき、としていますが、税務の執行の概略は次のようです。
債権消滅の場合
会社更生法の規定による更生計画の認可の決定があった場合において、その認可の決定により切り捨てられることになった部分の金額。
商法の規定による特別清算にかかる協定の認可もしくは整理計画の決定または和議法の規定による和議の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額。
法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額。
債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めたもの。
金融機関等の斡旋による当事者間の協譲により締結された契約でその内容が前述に準じるもの。
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁清を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額。
相当期間とは、通常3年から5年位を予想していると理解されています。さらに、書面により免除があることは、必ずしも公正証書などにかぎられません。債権者が債務者に対する債権放棄という単独行為がなされたことが書面上明らかであれば足ります。このような債務免除、債権放棄は、真実その意図でなされていることは、もちろん、必要であり、債務者に対し贈与したと認められる場合、例えば子会社に対して援助するために債権を放棄した場合などは、前記の取扱の対象になりません。
回収不能の場合、債権者が債権を放棄しなくても、その債務者の資産状況、支払能力等からみて、その全額が回収できないことが明らかになった場合には、損金に算入できます。従来は、貸倒の事実認定の判定基準として、破産、和議、強制執行、資産の整理、死亡、行方不明、債務超過の状況が相当期間継続し事業再起の見通しのないこと、天災事故、経済事惰の急変等の事実の発生を列挙していたが、個々の場合に厳格にすぎるとの批判がありました。そこで、現在は、列挙はせず、個々の事案に則して弾力的に判定するようにされています。
ただ、担保が存在する場合には、それによって担保される部分については貸倒は認められず、残余の部分についてのみ認められることになります。なお、債権の一部について、その部分についてだけ貸倒処理することは認められていません。
取引停止後一定期間弁済がない場合、債務者の事業は継続していても、その売掛金等の回収がほとんど予期できないときにも、次のような場合には、貸倒処理が認められます。
債務者との取引を停止した時以降一年を経過した場合。担保物があるときはその価額の大小を問わず適用されません。
その債権者が同一地域において有する売掛金等の総額が、その取立のために要する旅費その他の費用に満たない場合において、その債務者に対し支払の督促をしたにもかかわらず弁済がないとき。以上の取扱は、貸金等のうち売掛金等に限られます。したがって、貸付金および発生当初は売掛金であったがあとで貸付金に振り換えられたものも含まれません。そして、売掛金等について、この事実が発生すれば、売掛金等の額から備忘価額を控除した残額を貸倒として損金に算入することができます。
更生会社の場合には、さらに、特則が存在します。つまり更生債権者が更生計画の定めるところにより更生会社の発行する新株または新株引受権の割当を受けた場合、払込をしなかったとき、または、当該新株を取得する権利の価額が当該割当の基礎とされた更生債権に満たないときは、それぞれ、当該更生債権の金額または当該更生債権の金額と当該新株を取得する権利の価額との差額を貸倒とすることができる。裁判所に届出なかったため更生手続の対象とされなかった更生債権については、その金額をその更生計画の認可の決定のあった日において貸倒とすることがでぎる旨、認められています。
貸倒についての処理は、債権者が経済的事実として貸倒を認識し、その損金経理をした場合にかぎり税務上もこれを認めるという形でなされるのであり、法人が損金経理をしていないのに、税務上進んで損金として処理することはしません。

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