債権譲渡による債権回収

民法は債権消滅原因として、弁済、相殺、更改、免除および混同を規定しています。これら債権の消滅原因のうち債権回収に包含されるのは、弁済、相殺および債権者の交替による更改であって、その他全部が債権者に満足を与えるものではありません。債権の消滅原因とはされていませんが、債権譲渡は債権回収の一方法として包含されています。
資本主義経済組織のもとでは、債権譲渡は債権者が自己の投下した財産である債権の回収をはかり、資本の流動化のために適切な手段であり、近世法はいずれも債権を取引の客体として認め、債権の自由譲渡性を拡大し、取引の安全をはかっています。

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債権譲渡による債権回収は、自己の有する債権を第三者に処分するという形で行なわれます。現実に確定した債権のみでなく、条件付、期限付債権、将来発生する債権についても、譲渡性が認められています。債権の売買契約がなされると、債権移転の合意も包含され、債権は同一性を保って第三者に移転されます。債権は一般に譲渡性を有しますが、普通の指名債権についてはその譲渡性は非常に制限されています。
本来の債権者に弁済させることを必要とするもの、例えば扶養請求権、恩給請求権などは譲渡できません。
債権者を異にすることによって給付内容が全然変更されるもの、例えば特定人に教授する債権など。また雇主の債権、賃借人の債権も特定の債権者が債権を行使することに重要な意義があり、債務者の承諸がなければ譲渡できません。
当事者の意思表示によって譲渡性がなくなりますが、この譲渡禁止は絶対的でなく、善意の第三者には対抗できません。債権に譲渡性が与えられても、債権回収が迅速、安全、確実になされるためには、債権の存在が確実で、中間の譲渡行為に瑕疵がなく、債務者の資力が十分でないとその経済的機能はさほど大きくありません。この要請から債権の証券化をはかり、画一的に譲渡性を与え、債権譲渡の手続を簡略化して証券の交付によって効力を生じるものとし、証券の呈示者に対する債務者の弁済を保護し、債務者の抗弁権を制限しています。
各種の貸付取引債権のうち、証書貸付、手形貸付にかかる債権は消費貸借債権であり、通常は譲渡禁止の特約は付されていないために、債権者はこの債権を譲渡することができます。手形割引取引における手形を債権者が譲渡できることはいうまでもなく、また、債権者が割引依頼者に対してもつ買戻請求権も、譲渡禁止特約がないために、譲渡性を有するのが原則です。
当座貸越取引に基づき発生する貸越債権は、一定期間内の当該取引から生じる債権、債務の総額につき相殺をすることを内容とする取引から生じるものであるために、当座貸越契約の存続中は、その性質上、譲渡性がなく、銀行が該債権を譲渡しても効力がありません。
債権譲渡の効力として、債権は同一性を失わず、譲渡性を保ち譲受人に移転します。債権に付随する従たる権利も移転し、原則として債務者の債権者に対する抗弁権も伴って移転しますが、指名債権につき債務者が異議を留めず承諾したときは、公信力が与えられ、抗弁権は切断されます。この抗弁権は、証券的債権については一層制限され、弁済があったなどの証券の記載、裏書連続の欠快など証書の性質から当然生じる結果、譲渡人の知っている事実以外の抗弁権は一切制限されています。
譲渡債権が双務契約上の債権であれば、譲渡後も反対債権との牽連性を失いません。ただし持参債務については債務者は新債権者の住所に持参します。
譲渡債権に付随する利息債権、物的担保、保証債権、違約金債権なども移転されます。
譲渡債権につき確定判決あるときは、譲受人は承継執行文を得て強制執行することができます。
債権に付着する抗弁権、例えば同時履行、意思欠快、期限猶予、限定承認などの抗弁権も存続し、債務者は譲受人に対抗できます。
取消権、解除権の債権譲渡は債権者の地位の譲渡ではないから、これらの権利は譲受人に移転しません。
譲渡人は、債権譲渡の対抗要件である債務者への通知または債務者に承諾をさせる義務があり、債権証書などの引渡義務があります。債務者の資力担保義務については、債権の売主の担保責任として規定しています。判例では、特殊の債権譲渡の形態として、取立の目的のためにする債権譲渡につき、取立権根の授与と信託的債権譲渡を区別しています。つまり取立権限の授与においては、債権は譲渡人に帰属し、処分権能を失いません。譲受人は取立の範囲内では債務者に対して債権を行使できますが、債権を第三者に譲渡できません。これに対して、借託的債権譲渡においては、債権は対外的に譲受人に移転し、譲渡人は処分権、債権行使の権能も失い、譲受人は取立目的の範囲で債権を行使すぺき義務を負い、第三者に債権を譲渡することもできます。判例は、当事者の意思不確定の場合には前者と考えるぺきだとしていますが、学者はこれに反対し、譲受人は必ずしも譲渡人の利益のみから債権譲渡を受けるとはかぎらず、取立債権を自己の譲渡人に対する債権の弁済にあてることもあり、また単純な債権譲渡の通知がなされた場合は、取立権恨の授与かどうか外部から知りえないなどの理由から、原則として信託的債権譲渡とみるぺきだとしています。
債権譲渡につき債務者に対する対抗要件として、譲渡人から債務者に対する通知、承諾が必要であり、第三者に対坑するためには通知、承諾は確定日付ある証書によらなければなりません。二重に債権が譲渡された場合には注意すべき問題があります。第一の譲受人について確定日付ある証書によらない通知、承諾があっても第二の譲受人に確定日付ある証書による通知、承諾がなされれば、第二の譲受人が優先し、共に確定日付ある証書による通知、承諾があるときは、日付の先の譲受人が優先することになります。第一、第二の債権譲渡がともに確定日付ある証書による通知、承諾のない場合は、いずれの対抗力も優先できなくなります。債務者に対してはいずれも対抗できますが、債務者はいずれの譲渡が真実か疑問であるときは、弁済を拒否できると解釈すべきです。しかし、通知、承諾の対抗力は、不完全な状態にある数個の権利関係について主張できるのであって、一方がすでに消滅した場合にはもはや対抗の問題は生じません。例えば第一の譲受人が債権を譲り受け普通の書面で通知した場合でも債務者より弁済を受け、あるいはこれを免除した後に第二の譲受人が債権譲渡を受けて確定日付ある証書によって通知しても、第一の譲渡を否認することはできません。
民法では、債務者が資力が不十分であるのに債権者を害することを知って資産を不当に減少させる行為をなし債務者の一般財産保全のため債務者の行為の効力を否認して一般財産より逸出したものを取り戻す権利として詐害行為取消権を与えています。債務者に弁済の資力がない場合に、債権者が自己の債権保全のため、債務者の第三者に対して有する債権を譲り受け、あるいはこれを回収して自己の債権に充当することはよく行なわれるところです。債務者の第三者に対して有する債権も債務者の一般財産を構成し、全債権者の共同担保であることはもちろんであるために、このような債権譲渡が詐害行為になるかどうかが間題となります。一部の債権者に対する弁済、相殺が詐害行為とならないことは判例、学説も一致していますが、債権を譲渡して代物弁済をする場合について、譲渡債権額が消滅する債権額より少ない場合にも詐害行為となるとする判例がありまか。しかし、一般的にいえば、債権譲渡が対価を得ずに無償でなされるとか、有償でも不相当な対備でなされる場合は詐害行為となり、債権譲渡が相当の対値を得てなされる場合は、債務者が一部の債権者と共謀して他の債権者を害するため故意に譲渡したものでないかぎり詐害行為とならないと考えられます。

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