手形買戻債権の代位弁済

手形貸付において、債務者が借入金の弁済をする際には、債権者に手形の交付を主張することができます。逆にいえば、債権者から債務の履行の請求を受けた場合に債務者は、手形と引き換えに弁済をするという抗弁を主張することができます。手形の返還を受けずに弁済をしても、その手形が善意の第三者に渡っていてその者から手形金の請求を受けた場合には、債務者は、その手形金の支払もしなければならず、二重払の危険があるのであるために抗弁は当然のことです。

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この場合で債務者に連帯保証人がいて、その者が債務者に代って手形貸付契約の債務弁済をするときは、主たる債務者が同時履行の抗弁権をもっている時は、保証債務の付従性から、保証人も同じ抗弁の提出ができます。つまり連帯保証人が保証債務の履行をした場合は、連帯保証人は主たる債務者に対して、求償権の行使、および弁済により代位できる担保権等の行使ができますが、その際に連帯保証人が、債権者から手形の交付を受けていないと主たる債務者には同じく二重払の危険があります。したがって連帯保証人が保証債務の履行をする場合にも債権者に対し手形の引換給付の抗弁を主張できなければならないわけです。
この場合、債権者からの手形の給付は、債務者に対してか、弁済者である連帯保証人に対してかという問題がありますが、連帯保証人は、主たる債務者に対する求債権者となり、弁済により債権者に代位することになるために、五〇三条により、債権に関する証書であり、かつ債権者の占有する担保物でもある手形は代位者たる連帯保証人に交付されなければなりません。債務者は求債権の行使を受けた時に、こうして連帯保証人の占有に帰した手形につき引換給付の抗弁を主張することができます。なお、銀行が債権者である場合の手形貸付では、手形の返還に際しては通常銀行の裏書を抹消し、裏書の連続の関係によっては、裏書禁止のうえこれを行ないます。しかし銀行の場合、後述の銀行取引約定により規定されるので注意が必要です。
以上は、手形貸付の場合で、債務者が自手を債権者に交付した場合ですが、第三者振出の手形に裏書その上、債権者に交付してその手形金から利息を差し引いた金員を受領する所謂手形割引の場合であった場合は、通常手形割引は銀行で行なうので、銀行取引契約に規定されるところに従うことになります。全国統一の銀行取引約定書第六条は、手形の割引を受けた場合、割引依頼者もしくは手形の振出人に期限の利益の喪失事由があった時は、銀行からの通知催告がなくても当然手形面記載の金額の買戻債務を負い、直ちに弁済しなければならない、と規定しています。この割引手形買戻債務を履行しなければならない典型的な場合は、手形振出人がその手形を不渡にした時です。手形貸付の場合の保証履行による差入手形返還の関係と手形割引の場合の買戻債務履行による割引手形の返還の開係とは、理論的にも実際的にも何ら差がありません。銀行取引約定書によれば手形貸付についてまた手形割引についてそれぞれ銀行にとって、債権保全のために必要と認められる場合も銀行の請求によって債務の期限が到来して、債務の履行をしなければならないと規定されています。しかし通常の場合、手形貸付の場合の差入手形や手形割引の場合の割引手形が満期日に決済されず、不渡になった場合に、それぞれ、手形貸付の借入金債務、割引手形の買戻債務が履行されるぺき状態になるわけです。両債務の出発点となる手形の不渡も前者は主たる債務者本人の支払停止ですが、後者は第三者のそれであるために、債務履行の要求についての緊急度がおのずから異なります。ところが後者にしても結局保証人が債務の履行をせざるをえないとなるならば主たる債務者からの弁済が困難であったという点で同一です。手形割引の割引手形買戻債務を保証人が履行する場合も前述した手形貸付の場合と同様であり、手形の返還も弁済をなした保証人に対してなされることになります。
銀行取引約定書の末尾には、保証人は本人が貴行との取引によって負担する一切の債務についてこの約定を承認の上本人と連帯して債務履行の責めを負いますと規定され、つまり保証人は本人の全債務の連帯保証をするので、弁済に際して本人が銀行に対して有していた抗弁等は、手形貸付や手形割引等すべてを通して一律に保証人に引き継がれることになります。
銀行取引約定書八条は、手形決済が通常の形態によって行なわれず、他の預金の取崩によって処理される場合には、手形の返還を同時にすることを要しないとしています。この規定は債務者本人に対しては、手形返還の同時履行の抗弁権を許さないわけですが、これは債務者本人に対する差引計算の場合に限られ、保証人が債務者に代って債務の履行をする場合は別であるとの解釈であり、現に実務では、保証人に手形を交付しています。

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