手形の誤記は誰の印鑑で訂正すればよいか

 Aさんは、Bから約束手形の振出しを受けましたが、あとでよく見ると、受取人欄に、誤ってCの名前が記入されています。Aさんがかってに訂正して、印鑑を押しておけばよいのでしょうか。

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 手形がいったん振り出されると、つぎつぎと利害関係人を生じ、その氏名が手形に記載されていきます。そしてその各人の権利義務の内容は、手形上の記載内容に従って判断されます。ですから、手形の記載内容を訂正変更することは、多くの利害関係人に影響を 及ぼすことになり、それらの人の同意がなければできないと考えねばなりません。
 そして訂正は、実際にその誤記をした当人が行なうべきです。
 つまり、手形上の記載の訂正は、その誤記をした当人が、利害関係人の同意を得て行なうものといってよいでしょう。
 訂正後は、この全員が訂正部分に印鑑を押し ておくべきです。
 問題は、誰が利害関係人なのかということですが、原則として、訂正しようとする時点で、その誤記以後に手形上に署名している全員が、これに該当すると考えてよいでしょう。
 手形金額を誤記した場合を例に、考えてみます。約束手形が甲、乙、丙と順に移転したところで、甲が金額を減額訂正しようとする場合、中間者乙の同意はいらないとする考えかたもあります。
 丙が甲から支払いを得られなくて、裏書人乙に請求していくときも、訂正前より少額の請求なのだから、乙に不利益はないと考えるのでしょうが、これは正しくありません。
 乙は丙から、手形外の原因債権を請求行使されることも考えられ、それを支払って手形の返還を受けたところ、知らぬ間に手形金額が訂正されていたというのでは、甲丙による不正な手形変造をチェックできないからです。
 さて本問の、受取人の記載を訂正する場合を考えてみます。これについても、振出人には特別の不利益は及ばないから、真実の受取人が、一存で訂正してよいとの考え方があります。しかしこれには賛成できません。
 その受取人欄が当初から白地のままであったところ、Aさんが、うっかり誤った補充をしてしまったというのであれば、Aさん自身に訂正権限がありますが、すでに振出人Bが受取人欄を記載してしまっている以上、これをB以外の者が、かってに書き直す権限はないと考えるべきです。
 記載要件が厳格に法定され、権利義務の内容がその記載によって決まるという手形においては、いったんなされた記載を訂正する権限についても、厳格に考えねばなりません。
 それに、実際上の不都合も考えられます。AさんがかってにCの氏名を抹消してAと書き直し、そこにAという訂正印を押すか、何の印鑑も押さないでいるとします。そのような手形は、Aさんが、どこかで拾うか盗んできて、自分あてに振り出されたように偽装するため、かってに訂正したのではないかと疑われることにもなるでしょう。その意味では、白地手形の補充を誤って正当に訂正した場合にも、同様の問題を生じます。
 こういうわけで、Aさんとしては自分で訂正しないで、この手形をBのところに持ち込んで訂正してもらい、Bの印鑑を押してもらうか、さもなければ、新しい手形と差し替えてもらうようにしなければなりません。

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