常務が勝手に印鑑を押して会社財産を処分した

 A不動産会社の常務取締役Bは、会社の代表権がないのに、かってに会社所有地をCに売却する契約書に「A会社常務取締役B」と署名のうえ、自分の個人印を押してしまいました。この契約について、会社は責任を負わなければならないのでしょうか。

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 結論としては、契約について、A社は、Bがしたこの契約当事者として履行する責任を免れないでしょう。
 まずこの契約がA社を契約当事者とし、Bがその代理人という形で締結されたことは、間違いないとみてよいと思います。取引物件がB個人の所有地であるとか、BがB個人の住所を書いたうえで、本問のような署名押印をしているというような事情の場合は、B個人としての契約であって、「A会社常務取締役」という記載は、法律的には意味のない肩書きだと考える余地も出てきます。本問のケースは、いくら印鑑がBの個人印でも、B個人の契約と考えられるような事情にはないようです。
 会社が当事者となって契約するには、特別に会社から委任を受けた者が行なう場合は別として、会社を代表する権限のある者(代表取締役)が、まず会社名を書き、つぎに代表取締役であることを付記して署名し、押印しなければなりません。その場合の印鑑は個人印でも有効ですが、ふつうは会社の代表者印を使います。
 誰がその会社の代表取締役であるかは、会社の登記簿を閲覧するか、その謄本を取り寄せて 調べればすぐわかります。会社の取締役は、代表取締役と、それ以外の代表権がない取締役とにわかれ、専務とか常務とかの肩書きは、たんに社内的な地位、役割分担を示す呼称にすぎず、法律的な資格ないし権限を表すものではありません。
 そして専務であれ常務であれ、代表権がない以上、代表取締役の行為を取締役会という組織を通じて監督する立場にあるだけで、会社を代表して契約する権限はありません。したがって本問のBの行為は、無権代理行為となります。
 しかし、だからといって、民法の一般原則に従って、会社にはいっさい責任がないとするのも不合理です。
 たんなる社内的呼称だとはいえ、専務、常務その他の役職の肩書きは、名刺等にも印刷され、ほとんど常に対外的にも表示されます。そして、現実に社長のほかにも専務、常務が、社長と並んで代表取締役になっている会社も決して少なくおりません。
 登記簿さえ確認すれば、誰に代表権があるのかすぐわかるのですが、いちいちそこまでは調査しないのが取引きの実情であることからみて、登記簿による確認をしなかったことを、怠慢だとまではいえない面があります。
 そこで、そのような紛らわしい肩書きを使用させていた会社にも、責任の一端を負わせるべきだと商法は考え、特別の規定を置きました。副社長、専務、常務などという、代表権があると誤解しやすいような名称を会社が使用させていた取締役の行為については、相手がその取締役には代表権があると現に信じていたかぎり、会社が責任を負わなければならないというものです。
 このような取締役を「表見代表取締役」と呼んでおり、その行為について会社は、代表取締役の行為の場合とまったく同様に責任を負わされることになるのです。
 営業面を重視する会社では、少さい規模の会社なのに、むやみに専務、常務などという名称を使いたがることがありますが、その危険性もよく認識しておくべきでしょう。

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