社長が自分の借金に会社を保証人とする書類に印鑑を押している

 A会社社長Bは、自宅新築資金を知人Cから借金していましたが、その地位を利用して、会社を自分の連帯保証人とする契約書に会社代表印を押し、さらに会社のお金で、この借金を返済してしまいました。どういう問題があるでしょうか。

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 会社が保証契約を結ぶこと自体には、特別の問題はありません。その場合、当然代表取締役の名で契約書を作成し印鑑を押すことになります。したがって本問の契約およびその履行には、形式上はまったく問題がないのです。しかしなんの制約もなく、代表取締役がこのような契約を結ぶことを容認したのでは、会社財政はたまったものではありません。代表取締役は、好きなように会社のお金を流用し、私腹を肥やすこともできます。そうなっては、会社とは名ばかりで、個人営業と変わらないことになってしまいます。
 会社の取引きは会社の財産だけを基礎として行なわれ、会社の債務については、代表取締役であっても責任を負わされないのですから、その反面として、法律は会社財産が不当に減少することのないよう、厳しい監視をしなければなりません。商業帳簿の作成を義務づけていることはその代表例といえますが、取締役の行為についても、商法はさまざまな義務や制約を規定しています。
 その一つとして、商法は、会社とその取締役との間で財産の譲渡、会社財産の貸付けなど、取締役個人の利益のもとに、会社が損失をこうむるおそれのある取引行為がなされることを制限し、そのような行為をするには、取締役会の承認を受けなければならないこととしました。
 これによって、代表取締役がかってに自分の利益を図ったり、一部の取締役に対して、会社財産から便宜を与えられるなどの不正行為がなされることを、チェックしようとしているのです。
 この制約の対象となるのは、条文の文言にとらわれず、およそ取締役個人の利益となり、会社に不利益を与えるすべての取引行為であると考えられています。本問のような保証契約も、会社と取締役との間の取引きではなく、会社と第三者Cとの問の取引きなのですが、商法二六五条による制約を受けるというのが判例の考え方です。
 このようにBの行為は、商法二六五条に違反しているのですが、その違反の効果となると、いちがいに、無効として済ませるわけにはいかなくなってきます。取締役会で承認決議があったかなかったかなどということは、第三者が十分に知りうることではありません。取締役会の承認の有無だけを基準に、契約の効力を判定したのでは、第三者に予期しない損害を与えることになり、公平とはいえません。いくら会社財産を守る必要があるとしても、第三者に犠牲を強いることはできないのです。
 そこで会社とその取締役との間の取引きについては、無効として処理されますが、本問のケースのように、その取引きが会社と第三者との間になされた場合は、その第三者が、取締役会の承認がないことを知っていたときだけ、無効になるとされています。Cが取締役会決議のないことを知っていたという、確実な証拠がないかぎり、A会社は、Cに支払われたお金の返還を請求することはできず、Bに対し損害賠償を求めるほかありません。
 もちろんBの行為は、特別背任罪に該当します。

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