自力執行による債権回収

債務者は、自己の負担する債務は自ら履行する義務を負いますが、履行可能であるのにあえてその債務の履行をしない者がいます。このような場合には原則として、債権者は国に対して司法制度によりその権利の実現を求めることが認められています。この手続を定めたのが民事訴訟法です。
債務者が任意にその義務を履行しない場合であっても、債権者が自分の力で強力に、あるいは債務者の同意もとらずにその履行を強制したり、弁済を受けてしまうということは認められていません。このことを自力執行の禁止とか自救行為、自力救済の禁止といっています。

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このことは、自力執行を自由に認めると、その執行方法に問題が生じたり、公の秩序や平等の原則に反する結果が出たり、または債務者のもつ抗弁権の行使を制限される結果を生じるので、これが禁止されているのです。それと同時に、法がこの自力執行を禁止するからには、制度としても国に強制執行のような司法手続が確立していることが前提となるのは当然です。これは、法としての建前であり、現実にはある場合にはそれを認めざるをえない場合もあり、むしろ認めるのが妥当なような場合もあります。まず消極的な自力救済行為として認められるものに、違法な権利侵害行為に対抗して、現状を維持するためになされる行為がそれにあたります。もちろんこのような行為は、刑法上も犯罪とは認められず、民法上でも不法付為とはなりません。その点学説もこれを認めているものといえます。
次に、より積極的な自力救済行為についてもこれが認められる場合があります。例えば国家権力による救済を待ついとまがなく、しかも今それを実行しておかないと、権利の実現が物理的に不可能になることが明らかな場合のような場合です。むしろこの積極的自力救済行為が法旧に問題のあることであるために、それがどの範囲で認められるかは、具体的事例によりその妥当性を判断せざるを得ません。しかし、いずれにしても刑法上の正当防衛、緊急避難に該当するか、その類推適用の認められうる場合に限定すべきものといえます。
同じ自力執行でも、それが真にやむをえないものとして認められるものであれば、その行為の効果も有効に認められるとともに、その行為によって生じた相手方の損害に対して賠償責任も負わないことはいうまでもありません。間題は、その自力執行が社会の秩序維待のため妥当性の拒否される場合の効果はどうなるかという点です。まず、その行為が違法性ある場合には、刑事上の問題は別としても、それによって生じた損害については相手方に賠債すべき責任の生じることはいうまでもありません。次に、その違法行為によって生じた結果の効果の問題があります。たとえば、債権者が債務者に無断で、債務者の財産から債権の回収行為をしたとすれば、それはいうまでもなく一種の自力救済であって、違法であることはいうまでもありません。それは債権者は回収行為と考えたかは別として、たとえ弁済は法律行為でないこととしても、それは給付行為すら存在しないのであるために、弁済としての効果の生じていないことはいうまでもありません。
弁済としての効力は生じていないとしても、現実に弁済の目的物は債権者の占有にある以上、その占有者は占有物としての権利の認められることになりますが、その占有を失った者に占有訴権によって占有回収などの権利の認められることもいうまでもありません。その行為が取消などの決律行為により現状に回復できるものであれば、それは原則として絶対無効としてその効果の不存在を主張できることになります。
自力執行の民事事件としてよく生じる現象というのは、企業が倒産した場合の、債権者の早い者勝ち強い者勝ちの回収行為です。この回取行為の効果として、近年の判例でこの損害賠償債権の発生とは別に、その債権について国家権力による救済を求める権利まで失うとしたものがあります。
事案は、さる企業が倒産したところ、債権者が集まり、勝手にその財産を処分し回収に充てた後で、残債権について手形金の支払請求の訴えを提起したものです。この本判決は、不渡手形を出した会社の財産を、債権者らが共謀してほしいままに分配し、いわゆる自救行為に属する行為に出た者は、国家による放済をみずから放棄したものというべきであるから、残債権について民事訴訟を提起し国家による救済を求めることは許されない。として、残債権についてまで、その権利の保護を拒否したものである。
このように、早い者勝ち、強い者勝ちの取立を防止するために、その取り立てた金の回復を認めたり、損害賠償債権の成立を認めても現実にはこのような自力執行行為の防止にはそれほど役に立たないということも現状であるために、それを一歩進めて残債権についてまで法の保護を求める権利を否定してみるのも一つの方法です。
しかし、この法の保護を求める権利を否定するということは、その債権回収行為自身についてであればともかく、それが残債権についてまでということになると、一個の債権の残債権か同一債権者の有する債権のすべてであるか問題になります。

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