弁済の充当

債務者が同一の債権者に対して、同種の目的を有する数個の債務を負担する場合、または一個の債務の弁済として数個の給付をする場合において、弁済者の提供した給付が総債務を消滅させるに足りないときは、その給付をいずれの債務の弁済に充てるぺきかを決定する必要があります。これを弁済の充当といいます。
弁済の充当には、当事者の意思表示によってなされる場合と民法の規定によってなされる場合とがあります。そして、当事者の意思表示による充当には、弁済者と弁済受領者の合意による場合と弁済者または弁済受領者の一方的意思表示によってなされる場合とがあります。

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弁済者と弁済受領者は、合意によって提供された給付を、どの債務の弁済として取り抜うかを決定することができます。この充当の合意は、当事者間において、あらかじめ数個の債務の弁済の順序について契約のなされている場合であると、弁済の提供にあたって合意のなされる場合であるとを問いません。また充当契約は明示である必要はなく、黙示の充当契約が認められる場合もあります。例えば判例では弁済受領者自らが法定の充当方法に反する請求をし、弁済者がこれに応じて支払ったときは、弁済の充当につき特別の合意が成立したために、弁済受領者はもはや法定充当を主張してその請求に対する弁済の提供を拒絶できないとします。民法では、合意充当に関してなんらの規定も設けていませんが、一般に学説では、充当に関する民法の規定は弁済者と弁済受領者との間の債権実現のための具体的方法に関するものにほかならず、当事者間でこれらの規定の適用を排除して自由に決定できるものと解しています。判例でも、充当に関する民法の規定は任意規定であるために、当事者は契約によって民法の適用を排除できるとしています。
弁済充当について当事者間に合意がない場合には、弁済を充当すべき債務を指定することができる者は、第一に弁済者です。弁済者は、給付の時に弁済者に対する意思表示によって、その弁済を充当すべき債務を指定することができます。弁済の結果については、弁済者が最も利害を感ずるものだからですが、弁済者は、民法四九一条の法定充当の方法と異なった充当の順序を指定することはできません。
弁済者が充当の指定をしないときは、弁済受額者はその受領の時に弁済者に対する意思表示によって、充当すべき債務を指定することができます。通説では、受領の時に於て、とは必ずしも受領と同時にという意味ではなく、受領後遅滞なくとの意味に解すべきであるとしています。判例も、債権者が帰宅後、自己の留守中に債務者が弁済した事を聞き、二、三日中に証書を返還した場合に、債権者の充当を認めています。この弁済受領者の指定充当は、これに対し直ちに弁済者が異議を述べたときはその効力を失います。この場合、弁済者において改めて充当できるか、あるいは法定充当によるべきかについて争いがあります。通説では後説によりますが、その理由として、充当権を行使しなかった弁済者は、すでに充当指定権を失い、弁済受領者の充当の効果を失わせることはできますが、再び一方的に充当することはできないと解するのが公平だからとします。弁済受領者の指定する充当にも、その順序について民法四九一条の制限があることは、弁済者のなす充当の場合と同様です。
弁済者または弁済受領者から指定充当がなかった場合、及び弁済受領者の指定に対して弁済者が遅滞なく異譲を述べた場合には、債務者の全ての債務につき民法の定める順序に従って充当がなされます。
総債務中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にある債務から先に充当します。
総債務が弁済期にあるとき、または弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益多きものから先に充当します。例えば利息付債務は無利息債務より連帯債務は単独債務よりそれぞれ原則として債務者にとって弁済の利益の多いものですが、これらの諸事情が錯綜している場合には、諸般の事情を総合して決定すべきです。
債務者のために弁済の利益が同じときは、弁済刑のまず至ったもの、またはまず至るべき債務から先に充当します。
以上の標準によっても弁済充当の先後が定まらない場合には、各債務の額に応じて按分的に充当します。法定充当の二以上の法定充当がなされる場合においても、債務者がこれらの一個または数個の債務につき、元本のほか利意および費用を支払うべき場合において、弁済者がその債務の全部を消滅するに足らない給付をなしたときは、弁済は、費用、利息、元本の順に充当することを要します。民法がこのようにその順序を定めたのは、費用、利息および元本の経済上の性質に鑑み、公平の観念に合致させるためです。また、民法四九一条二項の意味は必ずしも明らかではありませんが、通説、判例とも本条文は、各債務の費用相互、利息相互、元本相互の充当方法につき民法四八九条を準用すべきことを定めたものと解しています。

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