公正証書による債権の変更

公正証書とは公証人がその権限内において、法律行為その他私権に関する事実について作成する証書ですが、そのうちでも、その内容が一定の金額の支払または他の代替物もしくは有価証券の一定の数量の給付をもって目的とする請求につき作成された証書で、直ちに強制執行を受けても異議がない旨の債務者の意思表示を記載したものは、民事訴訟法五五九条三号の要件を具備することによって、これに基づき強制執行の債務名義となりえます。これを一般に執行証書といいます。

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執行証書は他の債務名義と異なり、裁判所の関与なしに、両当事者の嘱託に基づき、公証人によって作成され、そこに記載されている債権の実現のため簡易に執行ができるため、債権回収にとって極めて簡便な方法なので、よく利用されています。
執行証書が強制執行における債務名義として執行力をもつ要件は民事訴訟法五五九条三項の規定するところですが、その要件を形式的に具備しておれば、執行力として何ら欠けるところはありません。
執行証書が債務名義として、執行力をもつ要件は民事訴訟法五五九条三項の規定するところですが、それを簡略に述べると次のようになります。
公証人がその権限内において作った証書であり、つまり公証人が職務上自ら作成し、当事者その他の関係人の嘱託により、その職務上において取り扱った事件として作成されたものでなければなりません。
証書の作成が法律上の規定に従った手続、形式に従ってなされたものでなければななりません。もし形式違反の場合はその執行証書自体が無効になります。
執行証書の内容となる請求は一定金額の支払または代替物、もしくは有価証券の一定数量の給付を目的とする特定の給付でなければなりません。
給付請求は具体的に特定している必要があります。いかなる当事者間にいかなる金銭債権が請求されているかが具体的に特定されていなければならず、それで足りることになります。請求が特定されていれば、記載されている請求の内容が事実と異なっていても証書の債務名義としての執行力には影響がありません。その債務名義の執行力は請求権の不存在を理由にして、請求異議訴訟によって排除されるまでは、一応有効に機能します。
給付すべき金額、数量は一定していなければなりません。金額数量が一定しているということは、そのことが公正証書に明確に記載されている場合はもちろんのこと、公正証書以外の他の資料を必要とせず、その証書自体から算出され得る場合でもかまいません。利息債権のような場合は、元本、利率、期間が証書面で定まっていれば算出できるとされています。
期限付債権や条件付債権も一定の請求であるためにさしつかえません。
将来発生する債権については、債務名義に成り得るかでは、これを否定するのが通説ですが、これを肯定する説も有力です。
すでに基本契約関係が明確であり、それから発生する債権の発生条件、金額が明示されていれば、停止条件付債権や始期付債権と実質的に差異がないことを理由に肯定する判例もあります。
執行証書の執行力の根拠について説は別れるところですが、通説では執行認諾の意思表示にその根拠を求めているようです。
以上の要件に違反する執行証書は無効であり執行力を欠くことになりますが、有効な執行証書の存在する限り、請求権の不存在とは明確に区別されるべきです。
債務者の救済手段においても無効な執行証書による執行は執行文付与に対する異議により、内容たる実体上の瑕疵のある執行証書に基づく強制執行に対しては、請求異議の訴えによるものとして理論上明確に区別されています。
債権の変更特に期限の延期、利率の変更、保証人の交替は公正証書で行なう必要があるかでは、前述のように、執行証書の執行力は、証書に記載された事項につきその要件を具備して有効なのであるために、あくまでいかなる請求の執行名義たり得るかは、その証書の記載のみによりこれを判定しなければなりません。債権者、債務者、関係人などの同一性、特定された請求債権の同一の範囲内では、たとえ事実と記載とが異なっていても、形式的に証書に記載されたとおりの事項につき執行力があります。
期限の延長は債権の履行期につき、実体上の変更にすぎないために、実体上の事由に基づく異議理由となることは別としても、形式的記載事項の変更がないかぎり執行力に影響がありません。したがって再び変更後の期限が到来した場合には、その執行証書をもって、強制執行可能であるために、期限を延長したからといって、改めて、公正証書を作成しておく必要はありません。
利率の変更について、利息債権は基本的債権たる元本債権とは別の支分債権であるために、利息債権があらかじめ公正証書に記載されていなければ、執行力は利息債権までは及びません。しかし記載されている以上はその記載されている利率により算出される利息債権の執行は可能です。
もし利率があらかじめ定められた率より低利率に変更された場合には、当初作成されていた証書によって変更後の利息の強制執行は可能です。高利率に変更された場合は、証書の執行力は証書に形式的記載された部分にしか及ばないために、その変更後の超過部分には及びません。したがってこの場合には実体上の権利関係の変更に伴って事実どおりの公正証書を作成しておく必要があります。
保証人の交替、執行証書の記載上に新しく交替した保証人の記載がない以上、その者に対して強制執行をなすことはできません。執行証書の当事者の同一性を形式的に欠くわけであるから当然のことです。したがってこのような場合には新しく公正証書を作成しておく必要があります。

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