債務引受

債務引受とは、債務者乙の債権者甲に対する債務をその同一性を保持したままで丙が引き受けて甲の債務者となる契約ですが、これは法文上には規定がありませんが、判例、学説上認められているものです。
債務引受は現在の複雑な取引関係において債務関係の決済の便宜化を図る必要があり、企業体の譲渡など企業再編成の立場からもその必要性が認識されていますが、債務引受により、不当に債権の担保力の弱化を招くことを避けるために債権者の意思的関与を無視することができません。

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債務引受の態様としては、狭義の意味では、乙の甲に対する債務を丙が引き受けて甲の債務者となり、それによって乙は債務を免れるものをいいますが、広義の意味では乙が債務を免れないで依然として債務者の地位に留まり、丙もこれと並んで乙と連帯して、同一内容の債務を負担するものをいいます。前者の場合を免責的債務引受といい、後者の場合を併存的債務引受または重畳的債務引受といいます。
前の二種のものに対して、債務者乙の負担する特定の債務を弁済する義務を債務者乙に対して負う契約を履行の引受といいますが、これは債務の移転があるのでもなく、履行引受人が債権者に対して併存的に債務を引き受けるものではないので、通常債務引受と区別しています。
債務関係の決済の便宜上や、債権回収の安全、確実をはかる意味から行なわれる場合、例えば丙が乙から100万円の借金をしている場合に、乙が甲から100万円の商品を購入した場合、乙の甲に対する代金債務を丙が引き受けることで、丙の乙に対する借金の弁済に充当することにすれば、乙が丙から借金を取り立てて、その金をさらに甲に支払うよりずっと時間的にも、手間も省け簡略化されます。
契約上の地位を一体として移転するような場合、例えば乙が甲から商品を購入し、丙に転売するような場合に、丙は買主としての地位を一体として譲り受け、乙はその売買関係から脱して、以後甲と丙との直接的な債権債務関係として処理することが便宜な場合があります。
債務者の債務を保証するような意味で行なわれる場合、丙が乙所有の担保不動産を乙から買って、乙が負担している被担保債務を引き受けて、丙が担保権者甲に支払うような場合には、通常重畳的債務引受が行なわれますが、このような場合は債務者乙の債務を丙が保証する意味があります。
個人の法人成りとか企業の譲渡が行なわれる場合、例えば個人事業を経営している乙が事業のために銀行甲から借り入れていたが、乙は事業の拡張に伴い株式会社丙に組織変更をするような場合に、乙の甲からの借入債務を丙に引き受けてもらうような場合です。
その他乙が特定の営業を丙に譲渡した場合など乙の甲に対する債務を丙が引き受ける場合が考えられます。
債務引受の方法、出当事者については免責的債務引受は債権者と新旧債務者の三当事者間の契約でなし得ることには問題はありません。また債権者甲と引受人丙との契約でなし得ることは、債務者乙に利益を与えるだけであり、債権者甲の意思を無視するものではないから特に間題はありません。ただこの場合でも旧債務者乙の同意は必しも必要ではありませんが、旧債務者の意思に反することはできないとするのが判例多数説です。債務者と引受人との契約では、債権者の承認を条件として効力を生じるとされています。
重畳的債務引受においては、出債権者、債務者、引受人の三当事者間の契約でなすことができ、債権者と引受人との間でできることも異論はありません。債務者と引受人との間でも、行なうことができます。ただし、債権者の受益の意思表示を必要とします。この場合債権者に対して、引受人に対する債権を取得する効果をもつ契約である点に着眼すると第三者のための契約の一種と解されるからです。
免責的債務引受においては債務が同一性を失わずに移転し、旧債務者は債務を免れます。
その債務関係について有していた抗弁権はすぺて引受人に移ります。
引受人と旧債務者との原因関係から生じる事由については、債務引受が債権者と引受人間でなされた場合には影響を与えませんが、旧債務者と引受人との間で打なわれたときは影響を及ぼすと解されます。
従たる権利も移転しますが保証債務や引受契約当事者以外の者の所有物上の担保権は保証人やその所有者の同意がないかぎり移転しないとするのが通説、判例です。
重畳的債務引受においては引受人と従来の債務者は併存して債務を負担することになり、その債務者と引受人とは原則として連帯債務の関係に立つとするのが判例ですが、この関係を当事者が連帯債務関係を成立させる意思を明らかに示さないかぎり、不真正連帯債務の関係にあるとする有力な学説もあります。
判例のように連帯債務と解すると債権者は債務者、引受人のいずれに対して債務の履行の請求をしても両者に請求の効果が及び、債務者乙または引受人丙のいずれかが履行すれば債務は消滅し、いずれか一方の債務が時効によって消滅すれば、他方は負担部分について債務を逃れることができるなど連帯債務関係における連帯債務者の一人に生じた事由が他の連帯債務者に及ぶことがあります。

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