振込指定

振込指定は、売買代金、工事請負代金等の指名債権を担保にとる方法の一つです。銀行がその取引先に対する債権の回収を確保するために、この方法を利用することが多いのですが、その場合には、取引先に対して支払われる代金を自行にある取引先の預金口座に振り込むことにして、これを貸付金の返済にあてます。医師に対する貸付金を、社会保検診療報酬支払基金や都道府県の国民健康保険団体連合体からの支払金で回収する場合にも、この方法が利用されます。銀行以外の者がこの方法を利用する場合には、債務者に対する支払金を、特定の銀行の自己の預金口座に振り込ませることになります。

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振込指定の特色は、継続的取引によって将来発生することが予想される不特定の債権を担保にとることができる点です。このような債権を質権や譲渡担保の目的としても、その効力に疑問があり、また、第三者に対抗するには債権発生のつど対抗要件をそなえる手数を必要とします。これが、振込指定の方法が案出された最も大きな理由です。もう一つの持色は、その手続が比較的に簡易なことであり、この点が買われて、すでに特定している債権の回収を確保する手段としてもこの方法が利用されます。
債権担保の目的で振込指定の方法をとる場合に、債権者と債務者、債務者と第三債務者との間でこの点につきそれぞれ合意をすることは当然考えられます。しかし、第三債務者が特定の銀行の預金口座へ振り込むことを承諾しただけで、振込指定が債権担保の目的でなされることを知らず、また、それ以外の方法で代金の支払をしないことや債権者の承諾がないかぎり支払方法を変更しないことを承諾していなければ、債権担保の目的を十分に達することはできません。そこで、債務者から第三債務者へ後記の依頼書を提出させ、これに第三債務者の承認の奥書を受ける取扱を一般にしています。なお、債権者は債務者から通常念証を差し入れさせ、債務者が現在負但し将来負担する一切の債務の返済を確保するため、第三債務者から受領すべき金銭につき振込指定の方法をとること、振込があったときは、弁済期の到来の有無に関係なく貸付金の返済にあてることができること、第三債務者に対する債権が確定したときは、そのつど債権者に対し報告すること、債権者との取引継続中は、第三債務者から他の方法で支払を受けず、また振込金の払戻の請求をしないこと等を確約させます。
振込指定は、債務者の代金受領方決として特定の預金口座へ振り込ませることにして、事実上他の債権者に優先して債権の回収をはかろうとするものです。法律で認められた担保権を設定したことにはならないために、振込指定の目的となっている債権が、第三者に譲渡または質入れされた場合、あるいは差し押えられた場合に、対抗できないで振込を受けることができなくなるのはいうまでもありません。この点で最も問題となるのは、債務者の支払停止後に、支払停止前の振込指定の合意に基づいて生じた預金との相殺です。破産法一○四条二号または会社更生法一六三条二号の規定によると、破産者または更生会社に対しその支払停止後に負担した債務を受働債権とする相殺は禁止されていますが、債務の負担が支払停止前の原因に基づくものであるときは、相殺が許されます。しかし振込指定が支払停止前の原因にあたるかどうかについては、見解が分かれています。ですが立法者が否定説をとっているのは明らかであり、ここでいう原因とは、直接に債務発生の原因となる行為を意味し、振込指定はこの原因に該当しないために、相殺は許されないと考えられます。振込指定が債権担保の目的でなされていることを知っている場合、特に第三債務者が前記のような振込依頼書に承認の奥書をしている場合に、第三債務者が債務者に他の方法で支払い、そのため債権者が損害を被ったときは、債権者は、第三債務者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。そのほか第三債務者が債務不履行責任をも負担するかどうかについては、見解が分かれていますが、振込依頼書に承認の奥書がなされている場合には、第三債務者は、債権者の代理受領権を認めたことになると解されます。
第三債務者が振込を依頼した代金債権の債権者に反対債権を有する場合に、反対債権を自働債権として相殺することは債権者との関係においては取引の信義則に反し、権利の濫用として許されないとする判例があります。大判決は、甲が乙銀行に対し信用状に基づく輸出荷為替手形を売り渡し、その代金の一部を丙に支払うことを依頼し、乙銀行がこれを承諾して、丙に対しその取引銀行の丙の預金口座へ振り込むことを承諾する旨の振込依頼書を発行したにもかかわらず、銀行は甲に対する債権で相殺して振込をしなかった事案についてなされたものです。本件の一審判決も、再の乙銀行に対する請求を認容する点では変わりありませんが、当座口座込が第三者のための契約であることを理由とします。これに対して、本判決は、振込依頼書の契約事項のなかには右の約旨が含まれていないこと、銀行業者間では振込依頼の承諾は第三者のためにする約旨を含まないと解していることを理由として、第三者のためにする契約であることを否定します。したがって、第三債務者が相殺その他の抗弁権を有する場合には、振込依頼を承諾するにあたり、抗弁権を留保することを明らかにした異議をとどめた承諾をしなければなりません。

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