債権期限の利益剥奪効果

貸付金について、債務者は利益を有すること、債権者はその後の債務者の資力の変動、信用状況に対応し必要があれば債務者の期限の利益を喪失させることができるよう期限の利益喪失条項を用意しているのが一般的です。
期限の利益を剥奪することによって、債務者の返済期限は却時に到来するので、債務者は債権者の指示するところに従い直ちに債務を弁済すべきことが、債務者に対する期限の利益剥奪の直接的効果です。弁済期が到来することによって、債権回収上必要があれば、債務者の預金と貸付金を相殺したり、債務者の提供している担保物件について担保権を実行したりすることができることは当然であり、また特約がある場合には約定利率で、特約がないときは法定利率で履行遅滞による遅延損害金が発生することになります。

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弁済期の到来によって、弁済期日の翌日から、債務の消滅時効の進行が開始します。割賦払の貸付金債権等についての消滅時効については説の別れるところがあります。
割賦払の履行を一回でも怠った場合に、債務の残額全額について期限の利益を当然に喪失するという特約があるときは、残額全額について即時に時効の進行が開始することは疑いの余地がありません。債権者の請求によって期限の利益を喪失するというタイプの週怠約款が付されている場合には、債権者がその全額について請求することができることとなった時点から、つまり一回の割賦金の過怠時点から残額全額について時効が進行するという有力説もありますが、判例では各割賦金債務について約定弁済期ごとに順次時効が進行し、債権者が残債務の全額を請求したときに限り、その意思表示が債務者に到達したときから残債務全額の時効が進行すると解しています。
連帯保証、物上保証は、附従性の原則から主たる債務の内容より重い責任を負担することはありえませんが、主たる債務の内容に変更を生じた場合には、保証債務等の内容もそれに応じて変更されるのが原則です。
民法一三七条の適用があるだけの金銭貸借では期限の利益剥奪の効果は保証人等に及ばないと解されていますが、一定の喪失事由が発生した場合に、期限の利益を剥奪されることがある旨の特約があり、これをあらかじめ承知して保証契約等が成立しているときは、保証人、物上保証人は、保証の当初から、期限の利益を剥奪されることがあることを予定していることであり、当然に剥奪の効果は及ぶと解されます。したがって、期限の利益を剥奪する際にも債務者に請求すれば足りることですが、実務的には保証人、物上保証人に対する履行の督促の意味で、これ等の者に対しても通知をする例が多くなっています。
連帯債務は、債務者の数に応した複数の独立した債務であって、保証債務のような債務間の主従関係がなく、したがって、請求その他共通目的に照らしての民法四三四条から四三九条に規定する特定の事項にかぎり、他の債務者にも及びますが、一般的には連帯債務者の一人について生じた事項は他の債務者に対してその効力を及ぼさず相対効しかもちえないものとされています。結果として連帯債務については、それぞれが負担する債務の期限または条件を異にすることも妨げないとされます。したがって、期限の利益喪失条項の適用についても、たとえば連帯債務者として甲、乙両人がいた場合に、甲または乙のいずれかについて喪失事由が発生したときは、甲および乙の双方に対して期限の利益を喪失させることができる旨の特約をしてある場合はともかくとして、一般的な期限の利益喪失約款では、このような事態を想定して明文の規定を設けてはいないので一方の債務者について生じた喪失事由をもって、他の連帯債務者の期限の利益を剥奪し、あるいは他の連帯債務者に剥奪の効果を及ぽすことはできないと解するのが相当です。
期限の利益を請求によって剥奪した後に、債務者側の信用が回復するような何らかの善後策が講じられたときに、債権者が先に有効に行なった期限の利益剥奪という意思表示を撤回、取消できるかということも一つの問題です。期限の利益剥奪という手段を、債務者への心理強制的に安易に使った場合等に起りうることでもありますが、意思表示が債務者に到達した後は、民法九六条による詐欺、強迫といった特別の理由がないかぎり、法的な意味での取消はできないと解すぺきです。つまり期限の利益を剥奪する意思表示によって、その時点から消滅時効が進行するといったように、この意思表示を基礎として法律関係が堆積されるわけで、民法は一般に意思表示の取消を認めていないからです。もちろん、期限が到来した後でも、債権者と債務者の間で合意して、新たに期限を設定することは可能であり、したがって期限の利益を一たん剥奪した後でも、債務者の承諾があれば事実上剥奪の意思表示を取消したのと同じ結果をもたらすような形で、当事者の合意で新たに期限の利益を与えることが可能なことはいうまでもありません。

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