時効中断と利息債権

金銭貸借取引がされると、それに付随して、借主から貸主に対し利息を支払うとの定めがなされるのが普通です。このような約定に基づいて発生する債権を利息債権といい、通常は元本に対する一定の割合、月あるいは年ごとに定期的に支払うという形で定められることが多くなっています。このような月ごと、年ごとに定期的、具体的に発生した各利息債権は、それ自体債権としての独立性を有し、他の債権の発生消滅に何ら影響されません。逆に民法一六九条はこのような利息債権について、普通の債権とは異なった短期の消滅時効期間を定めています。月ごと、年ごとに定期的に発生する債権は通常の債権に比べて各弁済期が短く、また次々に同種の債権が発生してゆくので、債権者、債務者間に支払に関する証書の援受、あるいはその支払の証拠の長期保存がなされることは稀であり、加えて、当事者が請求も弁済も行なわず、債権を長期間放置しておくことも少ないので、普通の債権より短い5年の消滅時効期間が定められているのです。

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具体的に発生した各利息債権はそれ自体独立の債権であり、消滅時効に関しても独自性を有するので、債務者が元本債権につき消滅時効を援用しても、利息債権について時効を援用しないかぎり、利息債権に関しても、時効の利益を主張することはできず、元本債権が請求等の中断事由により中断されても、それにより利息債権の時効が中断されるわけではありません。さらに、利息債権の存在は元本債権の存在を前提としますが、反対に元本債権は必ずしも利息債権を伴うわけではなく、一つの元本債権に数個の利息債権が発生するので、元本債権に対する支払、一部支払、猶予など元本債権の承認となるような行為につき、各々の利息債権をも承認するものと解することはとうていできません。したがって、貸付元金の時効中断は、貸付利息の時効を中断するかとの問いに関しては、これを消極に解するのが正当です。
利息債権に対する時効の中断は、元本債権の時効中断に何らかの影響を与えるかどうかでは、すでに述べたとおり利息債権と元本債権は、それぞれ別個独立の債権であって、独自に時効が進行するので、利息債権に対する請求、差押などが、元本債権についての請求、差押と、解されることはありません。この点においては、元本債権の時効中断が利息債権の時効中断に何ら影響を与えないのと全く同一です。しかしながら、利息債権は常に元本債権をその存在の前提としており、通常は利息を支払う際には、その利息を生み出した元本債権の存在を認識した上で、支払うのが通常です。このことを元本債権の側からみると、利息債権の支払とは、元本債権存在の認識を外に表示する行為であるということができます。これはいいかえれぱ、元本債権を承認するということになります。
このように利息債権の支払は、その一部支払のようにそれ自身利息債権の承認となる行為も含めて、元本債権の時効中断事由たる承認にあたります。つまり利息債権の時効中断事由中、債権者のなすべき中断行為は、元本債権の時効中断に影響を与えませんが、利息債権について債務者のなすある行為が元本債権の承認と認められる場合には、その範囲で、利息債権の時効中断事由が元本債権の時効中断に影響を及ぼすことがあるわけです。したがって、貸付利息の内入れが、貸付元金の時効中断に及ぼす影響については、前者は原則的に後者を承認という方法で中断するものと言うことができます。
この点で注意を要するのは、利息の支払といっても、そこに債務者の意思が推認される点をとらえて、元本債権の承認とされるために、債務者の積極的な態度が全くない場合にまでこれを敷行することは許されません。例えば銀行が行内の帳簿に預金の利子を元本に組入れる旨の記入をしたからといって、企業内で機械的に行なわれるこのような行為を元本の承認と認めることはできず、債権者が利息債権について強制執行をなし、配当を受けたのに対し、債務者が異議を述べなかったとの一事をもって、元本債権について債務者の承認があったと解することはできないのです。
債務者が利息の個々の支払に関与しない場合でも、債務者において将来にわたり、債務者の支配外で自動的に利息の支払がなされるような措置をあらかじめ一括して講じておいたような場合には、全般的な債務者の意思を推認し得ないわけではないので、将来、利息の支払が自動的に発生するごとに、その都度元本債権に対する承認があったと解されます。

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