時効中断の効力

民法一四八条は時効中断の効力は中断事由に関与した当事者、およびその承継人に対してのみ生じると規定しています。したがって時効の利益を享受し得る者であっても、各中断行為に関与しない以上は原則として時効中断の効力が及びません。その意味で時効中断の効力は対人的相対的なものです。この点は現行の時効制度が時効利益を受けるか否か、放棄するか否かを当事者の意思に委ね、時効利益の享受に意思主義を貫いている点から十分うかがい知れるところです。ここにいう承継人とは包括承継人および特定承継人を含みます。

スポンサーリンク

お金を借りる!

この相対的効力の原則には次に述べるような重要な例外があります。
連帯債務、民法四三四条は連帯債務者の一人に対する履行の請求は他の債務者に対しても其効力を生ずと規定しているので履行の請求という方法で時効中断がなされた場合は、中断行為に関与しなかった連帯債務者にも中断の効力が及びます。判例も連帯債務者の一人に対する裁判上の請求、破産債権の届出等に中断の効力を認めています。これに対して履行の請求以外の方法で、連帯債務者の一人に対する時効の中断は、他の債務者にその効力を及ぼさない債権者から催告され債務者の一人が承認した場合も同様です。もっとも相対的効力の例外に対しては、中断事由の一部についてのみ例外を認める実質的理由がないことや、その適用結果も均衡を失する場合が多いこと、さらに債権の効力を不当に弱めること等を理由にこれを批判する立場も有力に主張されています。
保証債務については、主たる債務者に対する履行の請求その他時効の中断事由は保証人に対してもその効力を生じると規定されています。したがって連帯債務の場合と異なり、履行の請求以外の中断事由、つまり差押、仮差押、仮処分、主たる債務者の承認による時効中断もその効果が保証人に及び、これは保証債務の付従性から認められた規定であり、主たる債務の履行担保を唯一の目的とする保証債務が、主たる債務の時効消滅以前に、時効によって消減するのを防ぐために定められたものです。したがって反対に保証債務について時効の中断がなされた時は、主たる債務者には時効中断の効力は及びません。さらに、主たる債務の短期消滅時効期間が民法一四七条ノ二によって10年に延長される時は、保証債務の時効期間もまた10年に延長されると解されています。
連帯保証債務について民法四五八条は連帯債務の規定を適用すると定めていますが、連帯保証債務の時効に関しては民法四三四条を適用すべきではなく保証債務についての特別規定たる民法四五七条によるべきだと一般に解されています。連帯保証債務も保証債務の一形態であり、主たる債務に対する付従性はこの場合にも当然要求されているからです。したがって主たる債務者に生した時効中断の効力はすべて連帯保証人に及び主たる債務者が承認という方法で時効を中断した時もその効果は当然連帯保証人に及びます。もっとも連帯保証債務の場合、主たる債務者と保証人は連帯して債務を負っているために反対に連帯保証人に生じた時効中断の効力は保証債務の場合のように主たる債務者に全く影響を及ぽさないのではなく、履行の請求という方法での時効中断は、主たる債務者にも当然その効力を及ぼします。差押、仮差押、承認による時効中断の効力は影響を及ぼしません。債務の一部弁済は一般に債務全部についての承認と認められるために連帯保証人のなした債務の一部弁済は主たる債務者に対し時効中断の効果をもたらしません。
民法一五五条は債権者が差押、仮差押、仮処分によって時効を中断した場合、現実に中断行為に関与しなかった当事者に、それらの行為があったことを通知することによって、時効中断の効力をそれらの者に対しても及ぽすことができる旨定めています。例えば物上保証人に対し、被担保債権の実行として任意競売の中立がなされた場合、債権者は債務者にその旨を通知することによって、債務者に対しても時効中断を主張することができます。
手形債務の時効中断について手形法七一条は、其の中断事由が生じた者に対してのみ効力を生じると規定しています。手形はその上に多数の債権債務を発生させ、しかもそれぞれの債務者が独立に債務を負担するので、手形債務の性質から当然時効中断の相対的効力が認められるのです。ただし、これに関連して次の点に注意しなければなりません。
手形保証債務は主たる債務に対し付従性を有するために、主たる債務が時効消滅した時は手形保証債務も消滅する。手形債務を主たる債務として手形外の連帯保証契約が締結された場合に、連帯保証人に対して履行の請求がなされた時は、手形債務についても時効中断の効力が及ぶ、手形の第一次的債務が時効消滅した時は裏書人等の遡求義務も消滅する。

お金を借りる!

詐害行為取消権/ 詐害行為取消権の対象/ 債権者の相続放棄と取消権/ 抵当権のある債権者の詐害行為取消権/ 担保権者に対する詐害行為の成否/ 詐害行為取消権の効果/ 債権者代位権/ 債権者代位権の目的/ 金銭貸借取引債権の消滅時効/ 時効の援用/ 時効中断の方法/ 時効中断の効力/ 時効中断と利息債権/ 時効期間経過後の債務承認/ 手形貸付における時効の中断/ 手形割引の時効と買戻請求権/ 債権期限の利益剥奪効果/ 追加担保/ 振込指定/ 代理受領/ 債務引受/ 公正証書による債権の変更/ 準消費貸借/