時効中断の方法

進行していた消滅時効がある一定の事由の発生によりその進行を中断することを時効の中断といい、中断の原因となる一定の事由を時効の中断事由といいます。時効が中断されるとそれまで経過した時効期間は法的に無意味なものとなり、中断事由が終了した時からまた再び新しい時効期間が開始することになります。これは、権利の行使と認められる事実または権利存在が推認される事実が発生した時は、権利の不行使という継続した事実状態が破られ、あるいは権利存在の立証が容易となるので、消滅時効制度をそのまま認めている必要がなくなるからです。
民法は一四七条に時効中断事由として、請求、差押仮差押仮処分、承認をあげ、一四八条から一五七条までに、その具体的内容を示しています。ただし、消滅時効の中断は前述したように権利の行使と認められる事実によって時効の基礎が失われる点にその本質があるので、中断の方法も、これらにかぎられる必要はなく、たとえば任意競売の中立、破産宣告申立等にも時効中断の効力が認められています。

スポンサーリンク

お金を借りる!

請求(裁判上の請求)訴えの提起を示し、訴えの種類は給付の訴えでも、確認の訴えでもよく、反訴の形でなされてもかまいません。また積極的な訴え提起にかぎらず相手方の提起した訴えに応訴し、自己の権利の存在を主張し請求棄却の判決を求めることも裁判上の請求に準じるものとして時効中断の効力が認められています。これに対して、債権の一部の請求は残部についての時効を中断しないとされており、また訴えが却下されあるいは取り下げられた時は中断の効力は生じません。
支払命令とは民訴四三〇条以下に定める督促手続です。支払命令は公示送達による送達が許されないので債務者の所在が不明な時はこの方法によって時効を中断することはできません。また差押の場合も債務者の所在がわからない時は中断の効力が生じないので、所在不明者に対する中断は前述の訴提起の方法をもってなすのが適切です。支払命令による中断は、命令が出された後債権者が仮執行の申立をせずに放置したため命令が効力を失った時は中断の効力は生じません。
和解のためにする呼出(任意出頭)裁判所に和解を申立て相手を呼び出してもらう方法と、双方が任意に簡易裁判所に出頭し和解期日の開始を求める方法を示します。民事調停法家事審判法に基づく調停、鉱業法に基づく和解、仲裁手続の開始も同様に解されています。これらは和解期日に相手方が出頭しないか、出頭しても不調に終った場合は法定の期間内に訴えを提起しないと中断の効力が失われてしまいます。
破産手続、参加債務者が破産した時、債権者が裁判所の定めた期間内に債権の届出をなすことを示します。和議手続参加、破産宣告申立、強制執行手統における配当要求等も同様に解されています。これらは後に参加を取り消し、またはその請求が却下された時は中断の効力を生じません。
催告、債権者が債務者に対して履行を求める意思を通知することを示します。方式は問いませんが、通常内容証明、配達証明郵使の方法がとられています。手形債権についての催告には手形の呈示、所持を要しません。催告はこのような簡易な中断方法であり、時効完成が目前となって裁判上の請求や執行という中断方法をとる時間のない時、いわば予備的な措置として存在するものです。したがってその効果も他の中断方法と異なり、それのみでは確定的な中断の効力を生じません。確定的な中断力を生じるためには、催告後6ヶ月以内に裁判上の請求等、他の強カな中断方法に訴えなげればなりません。このように催告自体は他の強力な方法によって補強されない以上中断に関して無価値な行為なので、催告のみを6ヶ月ごとに何回繰り返しても時効中断の効力は生じず、時効の完成がその都度遅れるわけのものではありません
民法一五三条は、催告を補強する他の強力な中断方法として、裁判上の請求、差押等の執行行為をあげていますが、承認については明文を欠いています。承認はそれ自体強い中断力を持つ中断方法ですが、一般にも催告を補強する中断事由とは解されていません。時効期間満了後の債務承認はそれ自体時効利益の放棄あるいは時効援用権の喪失事由とみなされ、債務者は催告の有無にかかわりなく、そもそも時効利益を主張することができなくなるというのがその理由です。
ところで判例では催告の中に裁判上の催告ともいうべきものの存在を認め、催告が裁判上の攻撃防禦方法の一つとしてなされた時はその催告は事件の係属中継続して時効中断の効力を生じるとし、訴訟終了後6ヶ月以内に他の強力な方法に訴えることができると判旨しました。また裁判上の請求が後に取り下げられた時も、裁判上の催告としての効力は認め、同様に訴訟の係属中、時効中断の効力が継続するとした判例があります。
差押、仮差押、仮処分は各執行行為を示し、抵当権の実行も同様に解されています。これらの執行が後に取り消された時は中断の効力は生じません。差押については執行の着手の時、仮差押については命令があった時それぞれ中断の効力が生じます。従って、差押の際債務者の所在が不明なため執行不能となった時は、いまだ執行の着手なきものとして、中断の効力は生じず、債権の仮差押の場合、第三債務者に命令が送達されなくても中断の効力には影響を及ぼしません。抵当権の実行がいつ中断の効力を生じるかについては競売申立書提出の時と競売開始決定の登記がなされた時の二通りの判例に分かれています。
承認とは時効の利益を受ける者が権利存在の認識を表示することを示します。表示方法には特別な形式があるわけではなく、一般に一部の弁済、利息の支払、担保の供与、支払猶予の懇請などが、解釈により承認となると解されています。承認は原則として相手方たる債権者に対して表示されなければなりません。
手形法上の訴訟告知とは手形債権に特別に認められた中断方決です。手形の裏書人が所持人から訴えを起された場合、振出人、前順位裏書人に対し訴訟告知することを示します。遡求を受けた裏書人の再遡求権が時効消滅することを防ぐため、認められた中断方法です。

お金を借りる!

詐害行為取消権/ 詐害行為取消権の対象/ 債権者の相続放棄と取消権/ 抵当権のある債権者の詐害行為取消権/ 担保権者に対する詐害行為の成否/ 詐害行為取消権の効果/ 債権者代位権/ 債権者代位権の目的/ 金銭貸借取引債権の消滅時効/ 時効の援用/ 時効中断の方法/ 時効中断の効力/ 時効中断と利息債権/ 時効期間経過後の債務承認/ 手形貸付における時効の中断/ 手形割引の時効と買戻請求権/ 債権期限の利益剥奪効果/ 追加担保/ 振込指定/ 代理受領/ 債務引受/ 公正証書による債権の変更/ 準消費貸借/