債権者代位権

債権者代位権は、債権の保全として債務者の責任財産を保全することを目的とします。したがって、その目的にそぐわない権利は代位権の目的とはなりません。
債権者の一身に専属する権利は除外されます。その権利の行使がその権利者自身しか行使できないものは、代位権の目的から除外されます。親族法上の身分権は、その人の身分と結合しているために、一身専属権であることは明らかです。一番問題になるのは遺留分滅殺請求権です。これは財産権の色彩の濃厚なもので、認めてもよいように思われますが、この行使は相続人の自由な意思に任せたほうが妥当だと思われるために、代位権の目的としないほうが無難です。

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人格権の侵害による慰謝料請求権については、否定するのが一般です。
財産権のなかで、使用貸借上の権利、雇傭契約上の権利は相続の対象となりませんが、しかし、これらの権利は、債務者の財産を構成しており、代位権の目的とすることは差支えありません。
請求権にかぎられることなく、取消権、相殺権などの形成権も目的となります。また、債務者の有する時効の援用権、登記申請権についても認められます。また直接に実体法上の権利を主張する形式としての訴訟法上の権利については代位しえますが、すでに債務者と第三者との間に訴訟が繁属した後において訴訟を追行するための個々の訴訟法上の権利については許されません。したがって、債権者は債務者に代位して、訴訟を提起し、強制執行を申し立て、請求異議の訴、第三者異議の訴を提起し、また、仮処分の取消の申立をすることができます。
差押を許さない債権は、債権の責任財産となすことのできないものであるために、除外されます。
債権者は債務者の権利を裁判外においても、裁判上においても行使することができます。債権者は自己の名で債務者の権利を行使することができます。債務者の代理人としてではありません。
債権者の代位してなした権利行使の効果は、債務者に直接生じます。債権者は、弁済の受領を要する場合に、債権者は債務者に代ってなし得ます。つまり債権者は、第三者に対して、自己に物を持参せよと請求することができます。これは債務者が受領を拒絶した場合に限りません。
債権者が債務者の金銭債権を行使して、自己に金銭を持参させた場合は、債務者は債権者に対して不当利得返還請求権を持つことになります。債権者の債権が金銭債権であれば、相殺して実質上、優先弁済を得たことになります。
裁判上代位する場合に、債務者が代位許可の通知をうけたときは、債務者はその後その権利を処分することができなくなります。裁判外の代位については規定はありませんが、同様に解されるぺきです。つまり債権者が債務者に代位の通知をするか、または債務者が債権者の代位を知ったときは、債権者が代位行使する権利については、権利の行使や処分行為をなすことは許されません。
債権者代位権は実際にはほとんど使われていません。債務者の権利を裁判外で行使して、第三者がそれに率直に応じてくれれば間題なく使われますが、応じてくれなければ訴訟にならざるを得ません。そうなれば債権者は、民事訴訟法の規定によって、差押命令、取立命令、転付命令により、あるいは、動産、不動産請求権に対する差押等によって、強制執行すればよく、代位権に頼る必要はありません。ことに金銭債権を差押え、転付命令を得たときは優先弁済を得たのと同じになります。そして、早急にしたいと思う場合は、債権仮差押命令を得て、債権を保全することができます。債権者代位権は、このような方法があるため、あまり用いられず、用いる必要はないといわれます。そして、本来の越旨を超えた拡張された例には使われています。
金銭債権の保全のために代位権が使われるのは、次のような場合が多いようです。もちろん、債務者の権利が、例えば金銭債権のような場合でもさしつかえませんが、それが使われないのは前述したような方法があるからです。
債務者の有する債権が動産、不動産の引渡請求権、登記請求権である場合に、保全の必要があれば、この代位権を使うほかありません。まず、代位によって、仮処分手続を行ない、後に強制執行をしなければなりません。債権者代位権が使わなければならない場合の第一です。
債務者の権利が消滅時効にかかる恐れのある場合の時効の中断などは、強制執行の適用の余地はなく、この代位権に頼るほかはありません。
債務者の有する取消権、解除権などの形成権は、強制執行ということはできません。ほとんど代位権の方法によらざるを得ません。この点実益があると思われます。
これらの形成権のうち、問題になるのは相殺権です。例えば、債務者BがCに対し債権を有し、CもまたBに対し反対債権を有している場合、Bの債権者Aが、Bに代って相殺権を代位行使することがでぎるかという問題があります。判例では、これを肯定しており、Bが、Cという一番抵当権者に対して、無担保の相殺適状の債権を有しながら、相殺しない間に、一番抵当権者Cが、自己の債権をDに譲渡したような場合に、二番抵当権者Aは、Bに代位して、Dに対し相殺することができます。その結果、一番抵当権は消滅し、二番抵当権はその順位を上げることになります。これが判例に表れた例です。
しかし、相殺権の代位行使はできないという説もあります。それは処分行為だからという理由によります。しかし、債権の取立というような処分行為にも認められるために、相殺権の行使は当然できるとしている者が多くなっています。

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