詐害行為取消権

債権者取消権が認められるためには、第一に債務者が債権者を害する法律行為をしたことが必要であり、第二に債務者、受益者または転得者が詐害の事実を知っていることが必要です。これは債務者の財産処分の自由と第三者の取引の安全を配慮したものですが、抽象的規定なので間題が多く、詐害行為があること取消権の客観的要件です。詐害行為があるためには、財産権を目的とする法律行為であること、債権者を害する法律行為であること、債権者を害することが必要です。
債務者のなした法律行為であって財産権を目的とするものでなければならないために、債務者以外の者がなした行為や、法律行為でない単なる不作為や事実行為、純然たる訴訟行為などは取り消しできません。しかし法律行為であれば、その種類は限定されないために、契約にかぎらず、単独行為でも合同行為でも取り消すことができ、またその行為が債権行為か物権行為か準物権行為かも間題ではありません。結果的に財産の滅少を招来する法律上の追認、迫認拒絶、催告、債権譲渡の通知など準法律行為も取り消しできると解されます。

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債務者が第三者に登記を移転する行為が詐害行為となるかでは、その登記をする実体的な法律行為の詐害性によって決定されます。無効な法律行為が取消の対象となるかでは、判例は制限的に肯定していますが、限定する必要はないとする有力説もあります。
婚姻、緑組、離婚による財産分与、相続の承認、放棄のような身分行為は、たとえそれが債務者の財産状態を悪化させるような場合でも取り消しできないというのが通説です。債権者を害する決律行為でなければなりませんが、この場合の債権はどのような債権か問題が多く、債権者取消権は、総債権者の利益のために効力を生じるので債権者代位権と異なり、単に特定物引渡請求権を保全するためには行使できませんが、債務者がその目的物を処分して無資力となった場合では、かつて大審院は、甲が動産を乙と丙に二重売買し丙に引き渡したので、乙が丙に売買の取消を請求した事案で、関連を否定し、取消債権者の債権は債務者に復帰した財産から平等の割合で弁済を受けるべきものであるために、金銭債権に限ると判示しました。しかし学説では特定物の引渡を目的とする債権も、債務者の一般財産によって担保されることは金銭債権と異ならない、などの理由で、これに反対し、最高裁は昭和36年7月19日の大法廷判決でこの先例を変更しました。取消権は、総債権者の共同担保の保全を目的とする制度ですが、特定物引渡請求権といえどもその目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、該特定物債権者は処分行為を詐害行為として取り消すことができます。しかし、かかる債権も窮極において損害賠償債権に変じるために、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様だからです。
担保を有する債権では、債務者の財産に抵当権、質権などの物的担保を有する債権は、担保物の評価額を越える限度で取消権を行使できます。しかし債務者以外の者の財産の上に物上担保権を有する場合は、債権全額について取り消せるというのが判例です。連帯債務、保証のような人的担保を有する債権は、担保者に充分な資力があっても、必ずしも優先弁済が保障されるわけではないので、債権全額について取消権を行使できます。
債権者の債権は、詐害行為以前に発生したものであることを要します。それは詐害行為当時存在しない債権が、その行為で害されることはないからです。行為前に発生したものであれば、行為後債権が譲渡されても譲受人は取消権を失いません。また行為のときまでに履行期が到来することも必要ではありません。詐害行為は、その行為のときに債権者を詐害するばかりでなく、取消権行使のときにも詐害していることを要します。したがって、債務者に行為のとき資産があれば、その後無資力となっても詐害行為とはなりません。債権者を害することが必要で、債権者を害するとは、債務者の処分行為によってその一般財産が滅少して、債権者が満足を得られなくなること、つまり無資力になることです。一般的には、詐害行為の前後でそれぞれ債務者の財産のプラスマイナスを計算し、その残額がその処分行為によって一層小さくなり、債権者が全額の弁済を受けられなくなること、と解されますが、この資力の算定については学説と判例がかなり対立しています。一部の債権者に対する弁済、代物弁済が詐害行為となるか、について、学説の多くはつねに詐害行為とはならないと解していますが、判例では一部の債権者と共謀し他の債権者を害するため故意にすれば詐害行為となるとしています。一部の債権者に対し抵当権の設定など担保を供与することは、担保権者に優先弁済を受けさせ、他の債権者の共同担保を滅少させることになるために詐害行為と成り得ると解するのが通説、判例ですが、有力な反対説もあります。債務者における保証債務、連帯債務の負担は、マイナス財産の増加であるから原則として取消の対象となります。プラス財産を無償または不当な廉価で滅少させることが詐害行為となることはもちろんですが、相当な対価で不動産その他の財産を売却することが詐害行為となるかでは、判倒では原則として詐害行為になるとし、ただ有用の資を弁ずるため売却し、その代金を有用の資に充てた場合は詐害行為にならないとしています。通説では取引の安全と債務者の財産整理を阻害することになるとして、これに反対していますが、最近は判例を支持する説もあります。
取消権の主観的要件で、詐害行為を取消すためには、債務者、受益者または転得者が悪意であることを要します。債務者は、詐害行為の当時それによって債権者を害することを知っていたことを要します。詐害の意思とよばれていますが、これは知っていたことで足り、それ以上の意欲、害意を必要としません。しかし一部の債権者に対する弁済、代物弁済が詐害行為となるためには、単なる知では足りず、債務者の悪意についての挙証責任は、債権者にあります。
債務者の詐害行為によって利益をうける受益者、またはその受益者からさらにその利益を取得した転得者は、その行為または転得の当時債権者を害すべき事実を知っていたことを要します。善意についての挙証責任は、受益者または転得者にあります。

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