不利益変更の禁止

妻Xは、その夫Yに対し離婚の訴えを提起しましたが、YもXに対し離婚の反訴を提起した。第一審裁判所は、本訴、反訴ともに請求を棄却する判決をしました。
Xはただちに控訴しましたが、Yは控訴期間内に控訴をしませんでした。これによって第一審判決の反訴部分は確定するでしょうか。
この場合、審理の結果本訴と反訴双方とも請求を認容すべきであると判断したとき、控訴裁判所はどのような裁判をすべきでしょうか。
次の場合には、控訴裁判所はどのような裁判をすべきでしょうか。
(イ) 一〇〇万円の損害賠償請求のうち、八〇万円だけを認容する第一審判決に対し、原告のみが控訴したとき、審理の結果、原告の請求は全く理由がないと判断される場合。
(ロ) 土地所有権確認の訴えを訴えの利益なしとして却下する第一審判決に対し、原告のみが控訴したとき、審理の結果、訴えの刊益はあるが請求の理由がないと判断される場合。
(ハ) 境界確定訴訟の第一審判決に対し、原告のみが控訴したとき、審理の結果、第一審判決より原告に不利な線を正当な境界と判断した場合。

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離婚訴訟は、XおよびYに対して合一に確定する必要があるから、本訴と反訴に対して一個の判決がなされます。したがって、第一審判決についてXのみが控訴を提起した場合にも、当然Yの反訴部分についても移審の効力が生じ、第一審判決は確定しません。離婚判決以外についても、本訴と反訴について同時に判決がなされた場合には、同一の結果になります。
Yの反訴部分については、前述で述べた通り確定はしません。しかし通常の場合には、Yの反訴棄却の部分については、Y自身が不服を申し立てないかぎり、控訴審は、Yの利益に変更することはできません。したがって控訴審は、第一審判決中のXの請求を棄却した部分を取り消し、Xの本訴請求を認容する旨の判決をなすべきです。この判決に対してYが上告すれば、第一審判決中の反訴に関する部分も確定しないが、上告がなければ、反訴請求を棄却した第一審判決が確定します。
しかし民事訴訟法三八五条は、処分権主義の表現であり、離婚訴訟にはそのまま妥当しないから、本設例については、第一審判決全部を取り消し、Xの本訴、Yの反訴それぞれを認容する判決を行なうという可能性が考えられます。
民事訴訟法三八五条の不利益変更の禁止の原則によって、原被告の申立てがないのに控訴審が第一審判決以上に不利益を与えることは許されません。したがって裁判所は、控訴棄却の判決をなすべきです。
原告にとっては、訴え却下の判決よりも請求棄却の判決の方が不利であるから、控訴審が第一審判決を取り消して、請求棄却の判決をすることは許されません。判例はこの場合について、たんに控訴棄却の判決をすべきだとしますが、第一審判決を取り消して、差戻し判決をすべしという考え方もあります。
境界確定の訴えは、非訟事件的性格のものとされており、処分権主義が直接に作用しません。したがって、第一審判決より原告に不利な境界線を控訴審が確定した場合でも、民事訴訟法三八五条には違背しません。ただし、境界確定の訴えを土地所有権確認訴訟の一種であるとして、三八五条の適用を主張する説も現われています。

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