控訴の利益

Xは、Y観光バス株式会社のバスで旅行中、転落事故により重傷を負い、八〇万円の損害を受けたとして、同額の不法行為に基づく損害賠償請求の訴えを提起しました。
第一審裁判所が、運送契約上の償務不履行に基づく損害賠償請求権が認められるとして、Yに対し八〇万円の支払いを命ずる判決をしたとすれば、判決に対しXが控訴することは許されるでしょうか。
Xは第一審の口頭弁論終結後になってはじめて、八〇万円のほかに、なお三〇万円の損害が生じていることを発見したとします。第二審で八〇万円の請求額を一一〇万円に拡張するために、Xが控訴を提起することはできるでしょうか。
設例の第一審において、Yは、転落事故はXの運転妨害により発生したもので、Yに過失はなかったと主張し、これが容れられて、Yは全面的に勝訴したとします。Yが、第二審で転落事故によるY側の一二〇〇万円の損害賠償請求の反訴を提起するために、控訴することは許されるでしょうか。
そして、次の上訴は許されるでしょうか。
(イ) 訴えの利益を欠くとして訴えを却下した判決に対し被告が提起する控訴。
(ロ) 第一審判決を取り消し、事件を第一審に差し戻した第二審判決に対し控訴人が提起した上告。

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Xの第一審における請求の趣旨は、八〇万円の支払いであり、これに対する第一審判決は、八〇万円の支払いを命じています。したがってこの点では、Xにとって第一審判決に対する不服は存在しない訳です。問題は、Xが請求の原因として不法行為に基づく損害賠償請求権を挙げているのに対して、判決が理由として債務不履行に基づく損害賠償請求権を挙げていることです。この差異がXにとっての控訴の利益を発生せしめるか否かが問題となります。しかし判決の効力が主文の内容に制限されることの結果として、理由中の判断についての不服は、控訴の利益を発生せしめません。したがって、Xの控訴は不適法として取り扱われます。
Xは第一審において全部勝訴しています。したがって形式的には、Xに不服は存在しないことになります。しかし実質的不服は存在します。日本の判例および学説の大勢は、形式的不服説を採りますが、形式的不服説を採りつつも、第一審口頭弁論終結後に発見された事実によって請求権が当初 の申立額より超過することが判明し、控訴審でその主張を許さなければ、既判力によって遮断されてしまう場合には、控訴を許す考え方も有力です。この考え方によれば、Xの控訴は適法となります。
この場合と同様に、被告Yは全面勝訴しているのであるから、形式的不利益は存在しません。かつ判決が確定した場合でも、Yの請求権が既判力によって遮断される可能性はないから、Yに控訴の利益は認められません。もっとも、判決の効力によって反訴までが遮断されてしまう特殊な場合は別です。
(イ) 訴え却下の判決は、実体的紛争を解決するものではなく、被告は、請求棄却の判決によって事件の最終的解決を求める利益を有するから、控訴は適法です。
(ロ) 差戻しを受けた第一審は、控訴審判決の理由に拘束されるから、この点について不服を申し立てる控訴人の上告は適法です。

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