控訴手続の中断と受継

Xは、Yに対し、売買にもとづく土地所有権の移転登記手続を請求する訴訟を提起し、裁判所は訴状をYに送達しましたが、その直後にYが心臓発作で死亡しました。まだ訴訟代理人は選任されていません。Yの相続人は、妻Y1、長男Y2、長女Y3の三名です。
Yの死亡は手続の進行にどのような影響を及ぼすでしょうか。だれが、いつから、死亡したYに代わって被告となるでしょうか。
裁判所がYの死亡を知らず、第一回口頭弁論期日を実施し、Xだけが出頭して弁論や証拠調べをしたときは、その効力はどうでしょうか。
Y1だけが訴訟手続の受継を申し立てたとき、裁判所は、その受継を許すべきでしょうか。ちなみに、受継の申立てが第一審判判決の送達後に控訴とともになされるときは、同申立ては、原裁判所と控訴裁判所のいずれに対してなされるべきでしょうか。
もし、裁判所が誤って、相続財産管理人を詐称するAによる受継申立てを許して訴訟を続行し、X勝訴の判決が碩定したとすれば、Yらは、どのような影響を受けるでしょうか。

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Yに対する訴状の送達により訴訟係属を生じているから、Yの死亡により訴訟手続は中断し、相続人Y1らまたはXからの受諾をまつことになります。しかし、YからY1らへの訴訟承継は、訴訟手続の受諾をまつまでもなく、Yの死亡により当然に、その時点において生じていることに注意を要します。民事訴訟法は、当事者の死亡をもっぱら訴訟手続の中断、受諾の面から規定しますが、これは訴訟承継の結果にすぎず、むしろ訴訟承継があったからこそ、新当事者の訴訟関与の確保のために手続の中断が認められるわけなので、中断した手続の受諾も、訴訟承継に対し確認的意味をもつにとどまり、参加承継、引受承継における参加、引受けがそれによって訴訟承継を生じさせる形成的効果を有するのと、混同してはなりません。
Xのした訴訟行為は、Y1らに対する関係で、また、裁判所のした訴訟行為は、XおよびY1らに対する関係で、それぞれ無効ですが、Y1らあるいはXとY1らの責問権の放棄、喪失があれば有効となります。
前半の問いについては、一般に共同相続人に対する土地所有権移転登記請求訴訟の性質をどのように把握するかにもよりますが、移転登記義務は性質上不可分であり、相続人全員を被告として紛争を一挙に解決することが訴訟制度上望まれると考えられるから、Y1、Y2、Y3が共同して訴訟手続を受け継ぐべきであり、Y1だけの受継申立ては許されないと解すべきでしょう。受継の申立ては、中断中の訴訟の係属する裁判所にするのが本則ですが、判決送達後に手続が中断した場合、上訴と共に上訴裁判所に受継の申立てをなしうるかに関し説が分かれます。この場合でも原裁判所に申し立てるべきものとする見解が学説上有力です。
結論としては、(1)俗称承継人Aに対する確定判決の効力は気らに及ばず、Y1らに対する関係では訴訟はまだ中断中で、Y1らまたはXからの受継が可能、とする考えと、(2)Aに対してなされた判決が確定した以上Y1らにも効力を生じ、Y1らとしてはAの代理権の欠訣を理由として再審で争うほかはない、とする考えとがありえます。相続財産管理人の訴訟上の地位の把握にもよりますが、(2)が正当でしょう。

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