必要的共同訴訟

X1ら二〇名は、S村大字Tの住民として、古くから住民のものと考えられてきたS原に採草の入会いを続けてきましたが、所有名義として登記されたX2ら五名が他の住民の同意なしにS原をY宅地開発会社に譲渡し、移転登記をしてしまいました。そのうえ、Yは、住民の入会権を認めずS原への立入りを許さないので、訴訟による解決が求められることになりました。
X1が、単独で、Yに対しその所有権取得登記の抹消登記手続およびS村大字Tの住民全員が入会権を有することの確認を求める訴えを提起したとします。この訴えは適法でしょうか。
訴えの提起をめぐって住民の間に訴訟賛成派と反対派が対立し、賛成派であるX1ら一五名だけでYに対し入会権確認の訴えを提起した場合には、裁判所はどのように処理すべきか。反対派のX2ら五名をYとともに被告として訴えを提起した、とすればどうでしょうか。
X1ら二〇名全員でYに対し入会権確認の訴えを提起したところ、口頭弁論には、X2ら五名だけが出頭して、Yの主張した入会権消滅の事実を認める旨の陳述をし、X1ら一五名は欠席しました。裁判所はどのように取り扱うべきでしょうか。
この場合に、裁判所が、X2ら五名につき弁論を分離してY勝訴の判決をしてしまったとします。他の、X1ら一五名は、訴訟上どういう状態におかれるでしょうか。

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最判昭和四一年一一月二五日は、入会権確認の訴えについて、入会権が部落民に総有的に帰属するものであることからこれを固有必要的共同訴訟と解しています。また、土地の総有を請求原因とする登記の抹消登記手続請求の訴えについても同様に解している。したがって、この判例の立場からは、X1が単独でなした本問の訴えは不適法であることになります。しかし、判例は、共有者からの登記の抹消登記手続請求の訴えについては共有者が単独でなしうるものとしており、入会権者についても同様に解する見解もあるため、この見解によれば、登記の抹消登記手続請求は適法であることになります。
入会権の確認訴訟が固有必要的共同訴訟だとすれば、それが入会権者全員によって提起されたものでない場合には、裁判所は、当事者適格を欠くものとして却下すべきことになります。すると、当事者の一部の者が訴えの提起に反対であるときには、この種の紛争の裁判による解決は望めなくなります。そこで、固有心要的共同訴訟の場合に全員が原告となれないときには、原告にならない者を被告として訴えることで、訴訟手続上当事者の顔を揃える途を認めるべしとする見解も主張されています。この見解によれば、X2ら五名をYとともに被告にした訴えは認められることになります。
入会権の確認訴訟は固有必要的共同訴訟であるから、共同訴訟人の一人の訴訟行為が全員にとって有利か行為であれば全員のために効力を生ずるが、不利な行為は全員のために効力を生ずることはありません。そこで、二〇名中五名が出席すれば、全体としては怠慢の不利益は受けません。しかし、出席した五名が入会権消滅の事実を自白し、他の者が欠席した場合には、欠席した一五名については入会権消滅の事実について擬制自白の効果が生ずるので、裁判所としては、全員が入会権消滅の事実を認めたものとして取り扱うべきことになります。
固有必要的共同訴訟の場合には、判決の合一確定の必要上、弁論の分離はできず、一部判決は許されないとするのが、判例および通説です。したがって、X2ら五名だけについてなした判決は誤った判決であるから、上訴で取消しを求むべきことになります。すなわち、この判決は法律上全部判決とみるべきもので、X1ら一五名の訴訟も完結したことになります。

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