多数当事者紛争と訴訟

A大学は、都心をはるかに離れた、Y私鉄の終点近くに在り、多数の学生が定期券により通学しています。Y私鉄では、この春争議があり、労働組合は、第一波、第二波、第三波と計三日にわたってストライキを行ない、電車の運行をさせませんでした。そのため通学できなかったX1ら二五〇〇名の学生は、各自の定期券につき日割計算による払戻しを要求しているが、Y側では言を左右にして応じないので、訴訟による解決を考慮中です。
X1らは、それそれが単独で訴えを提起するには、各自の請求金額があまりにも少なすぎて費用や手数と釣り合わないし、さりとて、二五〇〇名全員が共同原告となるのでは、訴訟手続上、はなはだ煩雑に耐えません。どのような方法をとればよいでしょうか。
X2だけが原告となって訴えを提起し、二五〇〇名全員の請求について判決を求めましたが、裁判所は、他の学生の分の請求についてはX2に当事者適格がないと判断する場合どのように処理すべきでしょうか。
立法論としては、設例のような場合の適当な訴訟方式として、どのような制度が考えられるでしょうか。

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(イ) 共同訴訟をするとしても、一人または数名の共通の代理人に訴訟を委任すれば、ある程度の効果は期待できるかもしれません。
(ロ) いわゆる選定当事者により、代表者を選んで訴訟をやらせます。その際、選定方法として、各人による授権(書面による証明)という厳格な方式が要求されていることがネックとなります。
(ハ) Y私鉄を定期利用しているA大学の学生群を共通の利害を有する一つの団体的なものとみて、その団体自身の名で訴訟ができるとする可能性はないでしょうか。この場合、当事者能力をもつ社団とみることができるでしょうか、判決効が個々の学生に及ぶかどうか等が問題となります。
(二) A大学に学生自治会があるとすれば、その自治会が二五〇〇名の学生のためにみずから原告となって全損害を請求できないでしょうか。学生から授権があった場合でも許されないでしょうか。さらに授権がない場合でも許されるとする余地はないでしょうか。当事者適格ないしいわゆる訴訟担当の問題です。
(ホ)その他、さしあたりたとえばX1のみにその者自身の請求について訴えを提起させ、他の学生達がX1側に一応補助参加しておいて、事実上はX1または数名の熱心な者だけが訴訟を追行し、共通の争点について学生側とYとの間に判決効を作り出すという方法は認められないでしょうか。
X2は自身の請求額については当事者適格を有しているので、その部分については本案判決がなされるはずです。残余の請求については訴え却下ということになるでしょうが、裁判所は判決前に訴訟要件の補正を命じる余地があるのではないでしょうか。
ここでみた手段はいずれもそれぞれ難点を有しており、少額の損害を被った多数の被害者の救済方法としては必ずしも充分とはいえません。そこで立法論としては、アメリカ法にある、いわゆるクラス・アクションという集団訴訟制度の導入が考えられます。これは、争点が共通する多数の権利者のうち全体の利益を代表するにふさわしい者が、個々の授権がなくても全員を代表して訴訟を追行し、その結果を全員に享受させるという制度です。もちろんこの制度にもいろいろな問題点があります。

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