請求の予備的併合

Xは、隣人Yからその使用中の自動車を買い受ける約束をして、代金二〇万円を支払いましたが、Yは自動車を引き渡さないので、売買契約に基づく自動車の引渡しを請求するとともに、売買契約の成立が否定される場合に備えて、予備的にすでに支払った代金の返還を請求して訴訟を提起しました。
主位請求を認容する場合、予備的請求はどのように取り扱われるのでしょうか。
主位請求について請求の放棄、認諾があれば訴訟はどうなるでしょうか。予備的請求について認諾があれば訴訟はどうなるでしょうか。
主位請求を認容する第一審判決に対し控訴が提起された場合、控訴審が主位請求を理由なしと判断したときはただちに予備的請求に ついて審判できるでしょうか。
次のような場合は、請求の予備的併合に該当するでしょうか。
(イ) Xは、「YはXに対しA会社の株式五〇〇〇株を引き渡せ。もしYが株式の引渡しをしないときは金一〇〇万円を支払え」との請求をした。
(ロ) Xは、Yから買い受けた外米の引渡債務不履行に基づく損害賠償として三〇〇〇万円の支払いを請求し、もしその契約が買付委託であるとすれば、Yには受託義務違反があるとして、同額の損害賠償の支払いを請求した。

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予備的に併合された請求は主位請求が認容されない場合にかぎって判決されます。裁判所は主位請求を認容するとき予備的請求については判決を要しません。これが、判例および多数説の立場ですが、異説も存します。
主位請求につき請求の放棄があれば裁判所はその要件を調査し、要件の具備しているとき書記官にそれを調書に記載させます。これによって主位請求についての訴訟は終了します。請求の放棄は棄却判決と同一効果を有するので、裁判所は予備的請求の当否につきさらに審理を続行しなければなりません。他方、主位請求の認諾があれば認諾は認容判決と同一の効果を有するので、それによって訴訟は終了します。なお、予備的請求につき認諾があっても、裁判所は順位に拘束されるので、それによって訴訟が終了することにはなりません。
予備的請求も主位請求とともに移審していると解されるので、控訴審は予備的請求についてただちに審判できます。これに対しては予備的請求について第一審が省略されたことになり審級の利益を奪うことになるとの批判もありますが、事実関係も同一であり訴訟資料も共通する部分が多いので、実質上審級の利益を奪うことにはなりません。
(イ) 本件は代償請求の例です。代償請求の併合は現在の給付請求に将来の給付請求をあらかじめ併合したもので、主たる請求が認容されない場合にかぎり従たる請求が認容されるという予備的併合にはあたりません。判例で代償請求の併合を予備的併合とするものもありますが意味は異なり、性質上は単純併合です。
(ロ) 本件では売買の事実と買付委託の事実が主張されていますが、訴訟物は契約上の義務不履行にもとづく損害賠償請求権を請求原因とするもので一個であり、請求の予備的併合ではありません。売買か買付委託かの二個の事実は攻撃方法としての請求原因事実であり、それらは特定の事実に原告が付した法的名称にすぎません。判例には請求の予備的併合としますが、正しくありません。

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