既判力6

Xは、Yに貸した金七〇〇万円の回収のためにYから土地を代物弁済として受けましたが、Yが移転登記に協力しないので、Yに対し所有権移転登記手続請求の訴えを提起しました。Yは、代物弁済の無効を主張して争ったが、X勝訴の判決があり確定しました。
Xがその勝訴判決に基づき所有権移転登記を得た後に、Yが、Xを相手どって訴えを提起し、代物弁済の無効を主張して、Yの所有権の確認、およびXへの所有権移転登記の抹消登記手続を請求したとします。前訴判決の既判力はこの訴訟に及ぶでしょうか。
Xがその勝訴判決に基づいて所有権移転登記を得ようと思いながら、ぐずぐずしているうちに、Yが、いちはやく、自分の息子のZに贈与を原因とする所有権移転登記手続をしてしまったとします。Xは、Yに対する前訴の勝訴判決に基づいて、ただちにYからZへの移転登記の抹消登記手続をすることができるでしょうか。
YからZへの移転登記がなされたのは、X、Y間の前訴の口頭弁論終結の前であったとします。XがあらたにZに対し、YからZへの移転登記の抹消登記手続請求の訴えを提起した場合、Zは、Yの代物弁済の無効を主張してXの請求を争うことができるでしょうか。

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前訴判決の訴訟物は、本来の代物弁済によって所有権を取得したとするXの所有権移転登記請求であり、通説、判例によれば、既判力は移転登記請求についてのみ生じ、所有権や代物弁済契約の無効につき中間確認判決のなされていないこの事案では、Yの後訴は既判力に妨げられません。ただし、理由中の判断につき、一定の場合に既判力や争点効を認める見解があり、また、登記請求訴訟では、登記が権利関係公示の技術であるから実質的権利関係が訴訟物をなし、既判力を生じるとの有力説があります。
Xの請求が代物弁済契約に基づく債権的登記請求なら、Zは口頭弁論終結後の承継人ではありませんが、所有権に基づく登記請求であるか、債権的請求か物権的請求かによって区別しない新訴訟物理論では承継人であり、Zに対し抹消登記の承継執行をなしうるようにみえます。しかし、Xが仮登記や処分禁止仮処分を得ていないこの事例では、YからXへの所有権移転とYからZへのそれとは二重譲渡の関係にあって末登記のXはZに対抗できないから、Xとの関係ではZはYの口頭弁論終結後の承継人とはいえず、既判力、執行力の拡張はありません。なお、Zを一応承継人とみて、ロ頭弁論終結後の事由たるZの対抗要件具備は、執行文付与に対する異議の訴え等で主張させるべきだとの見解もあります。
ZはYの口頭弁論終結後の承継人でなく、前訴の既判力はZに及ばず、ZはYの代物弁済の無効を主張しうります。
もっとも、贈与を理由とするYからZへの移転登記が通謀虚偽表示である場合には、所持者への判決効拡張の規定の類推を認める見解があります。この場合は、旧訴訟物理論でも債権的請求、物権的請求のいかんを問わず、またロ頭弁論終結前の承継人にも判決効は拡張されるから、XはZに対する承継執行文の付与を受けて移転登記を求めうるのであって別訴の利益を欠くし、Yと同視されるZに対する関係では、Xは対抗要件の具備を要しないで、承継執行文の付与を求め、執行しうることとなります。

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