既判力5

Xは、かつてフランスの画商から買い求めたユトリロの風景画をYに請われるままに売り渡しましたが、Yがその代金を支払わないので訴えを提起しました。その結果、Yに対しXに金七〇〇万円を支払えとの判決がなされ確定しました。ところが、判決確定後、Yは画を専門家に鑑定してもらったところ、偽物と判明しました。
Yは、Xを相手どって訴えを提起し、売買契約には要素の錯誤があったから無効だと主張して、金七〇〇万円の代金債務不存在の確認を求めることができるでしょうか。
Xは、金七〇〇万円の支払いを命じた確定判決に基づいて、Y所有の自動車その他を差し押えました。これに対し、Yは、本伴売買において画をユトリロの作と信じたのはXの欲目によるものだとして、詐欺を理由とする取消しの意思表示をしたうえ、請求異議の訴えを提起することが許されるでしょうか。
Yは、数年前からXに事業資金として一〇〇〇万円を貸しつけてあるので、この貸金債権をもって相殺する旨の意思表示をし、この事実を請求異議の原因とした場合はどうなるでしょうか。すでにXの提起した売買代金支払請求訴訟の口頭弁論において、Yとしては、貸金債権による訴訟上相殺の抗弁を三度も提出し、そのたびに、あとでそれを撤回した、という事実があるとすればどうなのでしょうか。

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後訴では、前訴の既判力の基準時以後に生じた新しい事由の主張のみが許されます。Yは、前訴判決の基準時前に存在した要素の錯誤による無効を主張する機会を前訴において手続上保障されていたのであり、前訴で主張しなかったことにつき過失の有無を問わず、後訴におけるYの要素の錯誤の主張は前訴判決の既判力によって遮断され許されません。
詐欺を理由とするYの取消権(形成権)は、基準時前に成立しており前訴で行使しえたはずですが、現実に行使されて権利関係の変動を生じるのは基準特徴であるところから、この場合にも失権効が及ぶかが問題となります。判例は、当初、基準時後の新たな権利関係の発生とみて、失権しないと解しましが、学説は、取消しに比べてより重大な瑕疵の場合である無効の主張が失権することとの不均衡を理由に、判例に反対していました。その後、判例も書面によらざる贈与の取消しの場合に失権を認めるに至りました。本件でも、請求異議の訴えで、口頭弁論終結後の取消権行使を理由とすることは、既判力の失権効により許されません。これに対し、実作法上形成権者に与えられた利益は訴訟法上も保護されるべきだとして、請求異議を許す見解があります。
Yが相殺権を行使し、これを請求異議の原因とした場合には、相殺権は前訴の訴訟物たるXのYに対する絵の代金債権とは直接関係のないYのXに対する貸付金の返還債権を自働債権とするもので、相殺の意思表示が前訴で当然にその提出を期待される防禦方法といえるかどうか問題です。そこで、判例は、学説とともに、取消権の場合と異なり、相殺権については従来の判例を維持します。この質問の事例でも異議の原因となる。ただ、この事例の後半のように、Yが、前訴で反対債権が相殺適状にあることを確知しながら結局は相殺しなかった場合は失権するとの有力説がありますが、多くは主観的事情により既判力の時的限界が変動する結果となることを理由に、これに反対しています。

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