既判力4

Xは、Yが所持し保管する硫酸入りの瓶にぶつかり、流出した硫酸を足部などに浴びて火傷をしました。そこでYに対し、(イ)治療費二〇万円、(ロ)慰謝料三〇万円、(ハ)得べかりし利益の喪失五〇万円の損害賠償を請求し、裁判所は慰謝料三〇万円のみを認容する判決を下し、これが確定しましたた。治療費の請求が棄却された理由は、その支払いが医療扶助によるものでXがみずから支出した証拠がないとするものでした。ところが、Xの火傷は種々の治療にもかかわらず完治せず、Xは訴訟の口頭弁論終結後にも皮膚移植手術などのため二回にわたり入院し、新たに入院料、治療費など四〇万円を支払いました。
Xは、その後、前訴で請求した治療費二〇万円の支出について有力な証拠を発見できたので、あらためてその請求のため訴えを提起したいと考えます。はたして可能でしょうか。
口頭弁論終結後になされた入院、治療のための費用四〇万円について、損害賠償請求の訴訟を提起することは妨げられないでしょうか。
硫酸を浴びたとき、衣服や靴の損傷により三万円の損害を受けたとして、賠償請求の訴えを前訴判決の確定後に提起することはできるでしょうか。

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治療費二〇万円の支払請求は前訴の訴訟物の内容をなしており、その棄却判決確定後に有力な証拠を発見しても、それは前訴の口頭弁論終結までに提出すべきものであって、Xの過失の有無を問わず提出は許されないのであり、前訴と同一訴訟物の後訴は不適法として却下されます。
判例は、明示の一部請求の既判力は残部請求に及ばないとする立場にたちながら、明示という要件をかなり緩和しており、本件でも、基準時に入院、再治療による損害発生が必ずしも予測できなかったならば、前訴請求が基準時での治旅費に限定されている以上、一部請求の明示ある場合として前訴判決の既判力に妨げられずに、Xは基準時後の入院、治療費につき別訴を提起できることとなります。一部請求を認めない立場には、同じく別訴請求を肯定するにあたっても、後遺症による損害発生を前訴判決の基準時後の新たな事実とみて説明するものがあります。
不法行為に基づく損害賠償請求の訴訟物を個々の物件ごとに分断する見解では、衣服や靴の損傷による賠償請求は前訴で主張されておらず、後訴は許されるが、前訴の提起によっては、その短期の消滅時効を中断せしめえません。判例や多数説のように、訴訟物を慰謝料請求と財産上の損害の賠償請求に二分する場合、本事例では、後者のうち治療費、得べかりし利益に明示で限定された一部請求たることを認める説では、衣服等の損害賠償請求の後訴に前訴の既判力は及ばず別訴を提起しうりますが、時効中断の効力が及ぶかが問題となります。判例は、治療費の一部請求訴訟により治療資金額につき時効中断の効力を認めますが、本事例でも、治療費等一部請求が衣服等を含む物的損害金体につき時効中断の効力を生じると解しえます。物的損害全体か二つの訴訟物とみ、かつ一部請求を否定する見解では既判力は衣服等の損害賠償請求にも及び、後訴は許されません。

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