既判力2

私鉄の駅から遠くないところに、Yは数年前からアパートを経営しており、Zほか十数名が入居しています。Xは、このアパートの建物が自己の所有に属することを主張して、Yを被告としてその旨の確認を請求する訴えを提起しましたが、請求棄却の判決が確定しました。
その後、Yの方から、Xを相手どって建物がYの所有に属することの確認を求める訴えを提起しました。前訴判決の既判力は、この後訴に及ぶでしょうか。及ぶとすれば、どのような裁判がなされるべきでしょうか。
Xは、Yを相手どって再び訴えを提起し、建物はXの所有であるにもかかわらずYが勝手にZほか数十名に賃貸して利益を得てきたのは不当だとして、これまでにYが受領した賃料総額に相当する不当利得の返還を請求することができるでしょうか。
Xが、今度は、Zほか十数名のアパート入居者を相手どって訴えを提起し、アパートの建物についての自己の所有権を主張して浴室の明渡しを請求したとします。Zらは、建物の所有権はYにあるとして争いましたが、裁判所は、審理の結果、X所有の建物であるとの心証を得るにいたりました。どのような裁判がなされるべきでしょうか。

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前訴でXが勝訴した場合と異なり、質問のケースでは、後訴におけるYの所有権の主張は既判力ある判断と矛盾しません。そのかぎりでは、前訴判決の既判力は後訴に及びません。もとより、標準時後の事由に基づかないかぎり、Xが後訴において防禦のために自己の所有権を主張することは既判力に反します。なお、前訴におけるXの敗訴が、防禦のために主張されたYの所有権が認められたことによるとしても、通説は、そうした理由中の判断には何らの拘束力も認めないから、後訴では、Yの所有権の存否について、あらためて審理判断をすることになるでしょう。
Xの所有権の主張が標準時後の事由に基づくものでないかぎり、標準時以降の不当利得の返還を請求することはできませんが、通説のように、標準時前の所有権帰属の関係は既判力で確定されないとみるときには、Xがその間のYの不当利得についてあらためて返還請求しても既判力に反しないことになります。
判決は当事者間の紛争の解決のためになされるのであり、しかも判決の基礎となる訴訟資料も当事者の弁論から採用されるのであるから、既判力は当事者間にのみ生ずるのが原則であり、法律がとくに第三者に及ぶ旨を明示している場合のほかは第三者に及ぶことはありません。Zほか十数名のアパート入居者は既判力の及ぶ第三者に該当しません。問題はX敗訴判決について後訴への反射効を認めうるかにあります。反射効については、その根拠、効力の及ぶ第三者の範囲などについてなお不明確な点が多く、必ずしも一般に承認されているとはいえません。最高裁は、転貸借契約の基礎たる賃貸借関係の存在を否定する趣旨の確定判決について、転貸借関係への反射効を否定しましたが、一般に反射効を認めようとする学説も、最高裁判決を支持しています。その論拠は、第三者が当事者の一方に対し実体法上従属的な地位に立つとしても、標準時前に成立している第三者の権利関係への不利益な影響を認めることはできぬという点にあります。そうだとすると、質問の場合にはX敗訴判決の援用はアパート入居者に有利に影響するので、反射効説は反射効を認めることになります。反射効否定説に立てば、後訴の裁判所はXの所有権を認め請求を認容しうることになります。

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