確定判決の不当取得

(1) XのYに対する二八〇万円の貸金返還請求訴訟において和解が成立し、Xは訴えを取り下げることになりました。ところが、Xはうっかりしてそのことを訴訟代理人Aに知らせなかったので、Aは訴えの取下げをなさず、訴訟を続行し、Y欠席のまま弁論終結となり、二八〇万円の支払いを命ずる判決が確定しました。
(2) Y男と情婦のB女はYの妻Aからの離婚請求を誘発するため、しめし合わせて、Bの子XよりYに対する認知の訴えと扶養料請求の訴えを起こし、Yがわざと防禦をしないでX勝訴の判決を確定させました。ところが、その後YのBに対する愛情がさめ、逆にYとAは仲よくなったので、Yは既払いの扶養料を取り返し、将来の扶養義務から免れたいと考えるようになりました。設例(1)について、YはXによる強制執行を阻止するため、請求異議訴訟その他の訴訟をすることができるでしょうか。
二八〇万円を支払った後に、不当利得返還または不法行為による損害賠償請求の訴訟をすることができるでしょうか。
設例(1)において、Xが当初よりYをだまして欠席判決を得る意図で和解したとすればどうなるのでしょうか。
設例(2)について、はたしてYの利用しうる救済方法はあるでしょうか。

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抗弁を提出する機会を逸したYにも多少失態があったとはいえ、正義感情としてはXの不注意は許しがたいのですが、いったん既判力をもってXの請求権が確定された以上、標準時前の事由に基づいてその既判力を左右しようとする試みは、法的安定の要請に照らして、承認できません。すでに債務者が限定承認をした事実を知りながら、債権者が無留保の給付判決を得て強制執行に着手した事件について、判例は、判決を執行すること自体を不法とみて請求異議の訴えを認めましたが、これでは、既判力を尊重して異議事由を標準時以後に生じた権利変動に限るという法の趣旨が無視されるし、既判力との関係を抜きにして執行自体を不法というのも早計です。また、Yが二八〇万円支払ったことによるXの利得が不当利得であるといいうるためにはXの請求権がなかったことを認める必要がありますが、それは明らかに既判力に反します。判例は、Yのために、不法行為に基づく損害賠償請求を認めていますが、請求認容のためには、やはりXの請求権はなかったといわざるをえないのであり、これも既判力に反します。
Xが確定判決の騙取を意図して和解をした場合でも、当該確定判決に既判力が生ずる以上、既判力を無視する形でYの救済をはかることはできません。Yが別に再審の訴えを提起しうる場合であっても、損害賠償請求の訴えを独立に提起することを妨げないとする見解もありますが、再審の訴えを通さずに既判力の拘束を排除するというのは、筋が通りません。もちろん、Yが再審の訴えを提起すると同時に予備的反訴として損害賠償を請求することは可能です。
Yは、不当判決を反道義的に利用する意図で裁判所を欲目し、確定判決を不当に取得しながら、その不当を理由に救済を求めようとするものであり、一般的にいって、その態度はクリーンハンドの原則に反するでしょう。ただ身分関係とそれに附随する法律関係は客観的事実に基づいて確定されるべきであるという要請も無視しえないため、再審の訴えを認めうりますが、X勝訴判決が取り消されても、既払いの扶養料はその給付の動機が反倫理的なものであり、不法原因給付に当たると解されるので、その返還請求は認められないでしょう。

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