裁判上の和解2

Xは、道路を通行中、Yの運転する車にはねられ重傷を負いました。その損害賠償としてXはYに対し五〇〇万円の支払いを求める訴えを提起し、口頭弁論期日においてYからXに直ちに三〇〇万円を支払うことで裁判上の和解が成立しました。
Xは、「自分が和解をしたのは、現在支払いをしてもらえれば少額しかもらえなくても、結局有利になると判断したためです。実際に払ってもらえないのであれば、和解には応じなかったはずであり、したがって、本件和解には要素の錯誤があって無効である」、と主張して和解無効確認の訴えを提起しようとしています。このような訴えは許されるでしょうか。管轄裁判所はどこになるでしょうか。単なる期日指定の申立はできるでしょうか。そのほかに方法があるでしょうか。
その後、Yは三〇〇万円を一向に支払おうとしないので、Xは和解を解除する旨の意思表示をしました。これに基づいて、Xとしてはどのような裁判上の手段をとりうるでしょうか。
設例において、X、Y間の話合いにより、訴訟外で成立した示談に基づいて、裁判上の和解をなすために、Yの代理人である弁護士BがXの委任によりその代理人Aを選任したとすれば、Xは、弁護士法違反を理由に裁判上の和解の無効を主張できるでしょうか。

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裁判上の和解の瑕疵を主張しうるか否かは、もっぱら裁判上の和解に既判力を認めるべきか否かにかかっています。裁判上の和解に裁判所が関与するとはいえ、それがあくまでも当事者の合意を前提とする自主的紛争解決形式である点からみて、既判力否定説が正 しいと考えられます。しかし、かりに既判力否定説により要素の錯誤の主張が許されるにしても、Xが和解に応じた事情の認識についての錯誤は、和解の動機の錯誤で、それが告示されない限り要素の錯誤にはならないから、これを理由とする和解無効の訴えは理由がありません。
和解無効の訴えを認める立場によれば、質問の訴えは理由がないが適法です。その管轄裁判所は、一般原則によりYの普通裁判籍所在地の裁判所です。これは専属管轄ではないから合意管轄も応訴管轄も認められます。和解無効の主張方法として新期目指定説があること、請求異議の訴えが認められることは既述のとおりですが、これらのほか旧訴の訴訟物について再度の訴えの提起を認める見解もあります。
裁判上の和解の法的性質につき訴訟行為説を別にすれば、私法行為説、両性説および併存説のいずれの見解によっても、和解が私法上の契約を含み、それが債務不履行により解除されることは認められます。解除は新しい法律関係の発展であるから、既判力肯定説を前提にしてもこれを認めざるを得ません。解除の効果は遡及しないから旧手続は復活しません。そこでXは改めて五〇〇万円を訴求しえます。
弁護士法二五条一号は弁護士の職務執行の公正を期するために双方代理の禁止を規定しています。Yの代理人である弁護士BがXの委任によりその代理人Aを選任することは、和解につきBが直接Xを代理するわけではないにしても、Xの委任によりAを選任する行為が同号に抵触すると考えられます。同号違反の訴訟行為の効力については問題があります。絶対無効説、追認有効説、当然有効説なども考えられます。しかし同条違反は弁護士の懲戒理由にはなっても当然無効原因にはならず、責問を認めれば当事者の不利益は救済されます。

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