裁判上の和解1

約束手形の所持人Xは、振出人Yとの間で手形金ならびに損害金合計三〇万円の債権につき、次のような起訴前の和解をしました。「(1)Yは翌月より毎月末に五万円ずつ五回に分けて二五万円支払うこと、(2)Xは五万円を免除すること、(3)Yが一回でも支払いを遅滞したときは、(2)項の免除は当然取り消され、Yは残額を即時支払わなければならないこと」。XはYが第一回の支払いを遅滞したとして、三〇万円の即時支払請求につき執行文を得てYの動産を差し押えました。
Yは、起訴前の和解をしたのは、Xへの裏書が期限後災害であることを知らなかったためです。それ故、「要素の錯誤があるから、和解は無効である」と主張し、請求異議の訴えを起こしました。裁判所はどのような裁判をすべきでしょうか。Yから和解の無効を主張する方法としては、そのほかどのような仕方があるでしょうか。
Yは、かりに和解の無効を主張することができないとしても、いまだ分割支払いにつき遅滞を生じていないと主張し、Xによる強制執行をチェックしたいと考えます。どのような方法で主張することができるでしょうか。
仮にYは会社であって、本件和解につき、Yを代表したAは専務代表取締役と称してはいますが、代表権のないものであったとします。Yは、このことを理由として和解の無効を主張できるでしょうか。

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民事訴訟法二〇三条は、裁判上の和解が確定判決と同一の効力を有すと規定します。ここに確定判決と同一の効力とは既判力をも含むか否か見解が対立します。既判力肯定説によれば、要素の錯誤による和解無効の主張は許されません。これに反して既判力否定説によれば、要素の錯誤による和解無効を主張できます。裁判上の和解が確定判決に代わる紛争解決形式 であるとみて、その成立に裁判所も関与するから既判力肯定説も有力ですが、裁判上の和解が両当事者の合意を基礎とする自主的紛争解決形式である点から既判力否定訳がどちらかといえば通説です。
既判力否定説にたち、裁判上の和解、無効の主張方法については見解が対立します。しかし、瑕疵ある和解調書を債務名義とする執行に対して請求異議の訴えを提起しうる点につき異論がない。Xへの裏書が期限後裏書であることを知らずになした和解につき要素の錯誤を主張しうるか問題です。通常期限後裏書であればYが和解に応じることはないと考えられますが、期限は明示されているから、錯誤につき重大な過失があり、これを主張することはできません。要素の錯誤があれば請求異議の訴えは認容されます。訴訟係属中の和解につき、請求異議以外の和解の無効の主張方法として、和解無効確認訴訟という別訴によるべしとする説と、新期日指定の申立てによる旧手続の続行によるべしとの説が対立しています。別訴説は和解無効の紛争と旧手続の紛争とが別個のものであるとの立場を前提とするのに反し、旧手続続行説は前者が後者の附随的紛争であるとの立場を前提にします。起訴前の和解について後者は問題にならないから、瑕疵の主張は前者によります。
Yによる分割払いの遅滞は残額全額の即時の給付義務を発生せしめるとの観点からは、これを争う方法として請求異議の訴えが考えられます。これに対して、義務はすでに発生しておりその執行が停止条件にかかっているとみるならば、執行文付与に対する異議ないし異議の訴えも救済として考えられるが、かように解することには無理があります。
和解に私法的側面を認めれば、その面で和解は無権代理の法理から私法上無効です。和解の訴訟行為たる側面についても追認権者の追認なき限り無効として扱われます。

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