鑑定

Xは、Yに土地を賃貸していましたが、地上の家屋が朽廃したことによる賃貸借契約の終了を理由に、Yに対する家屋収去、土地明渡請求の訴訟を提起しました。Xから建物の朽廃の有無につき鑑定の申請があり、採用されました。第八回口頭弁論期日にその鑑定書が提出されましたたが、Xはこれを援用しない旨陳述しました。しかし、裁判所は鑑定を証拠としてYの家屋は朽廃していないと認定してXを敗訴させました。
Xは控訴して、次のように主張しました。これらの主張は理由があるでしょうか。
(イ) 当事者が鑑定の結果を援用しないときは、裁判所はそれを証拠資料とすることはできないはずです。
(ロ) 鑑定人が現場で鑑定の資料を収集するとき、Xは立ち会っていなかったし、鑑定結果に対する理由が示されていないから、本鑑定は違法です。
民事訴訟上、鑑定は段々重要な地位を占められる思いますが、実際の訴訟において主にどのような事項について鑑定か用いられているでしょうか。
鑑定を職権で命ずることができるでしょうか。

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(イ)証拠調べがなされると、当事者の援用がなくとも、裁判所はその結果を証拠資料とすることができます。この効果がたとえ申立当事者が援用しないと陳述しても排除されないのは、ここでもいわゆる証拠共通の原則が働くためだと解されます。事案については同旨の下級審判例があり、このことは必ずしも鑑定が職権によるか否かとは関係がありません。(ロ)鑑定意見への信頼感を損わないため、鑑定の調査には、通常当事者に立会いの機会を与えた方がよい。しかしこの調査には、いわゆる当事者公開の適用がないから、立会いがない鑑定も違法ではありません。また鑑定の結果に理由が示されていないことも、証拠能力を否定するものではなく、違法とはなりません。つまり理由の示されていない鑑定をどの程度信用するかは、結局裁判所の自由心証の問題です。
鑑定人が法規または経験則について専門知識を報告するときは、証人との区別は明らかです。ところで事実に関しては、証人がすでに経験した事実の認識を報告するのに対し、鑑定人は裁判所に命じられたのちに形成する事実判断を報告する点に、両者の区別があります。専門的知識によってすでに得ている事実につき報告をする鑑定証人は、この意味で証人です。証人が非代替的であるのに対し、鑑定人は代替的であり、忌避もできます。
法規・経験則の例としては、外国法、規約、地方自治体の条例、慣習法や、高度の専門法則などがあります。他方裁判官の通常の知識により認識できる推定法則は立証を要しません。事実判断の例としては、文書の真正性の確認のための筆蹟・印影・指紋・使用インク・用紙の異同、不動産の価格や適正賃料の額、特許事件での物の性質・効能・構造等、傷害の原因・症状、労働能力の喪失の程度などが代表的です。
鑑定は当事者の中出によるのが原則です。職権による場合としては、管轄、鑑定の嘱託、釈明処分、検証の際の鑑定があります。学説の中には、鑑定は裁判所の判断能力を補充するものであるから、必要なときはつねに職権で命じうるとするものがあります。

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