証明責任2

製鋼会社Yは、市内に工場を持っていますいるが、工場周辺に居住するXら住民二七〇名は、工場から発生する煤塵、騒音、振動によって、快適な生活を妨げられ、また一般的な健康被害および疾病増悪などの被害を被ったとして、総額九〇〇〇万円の慰謝料の支払いと一定値以上の煤塵を発生させてはならない旨の差止め請求の訴えを提起しました。
Xらの請求は、いかなる性質の権利に基づくものでしょうか。
公害訴訟の要件事実の立証は困難であるといわれますが、それはどのような事情によるのでしょうか。またその克服のためにどのような解決の試みがなされているのでしょうか。

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請求の根拠となる権利として次のようなものを考えることができます。(イ)民法七〇九条に基づく不法行為説、これはさらに(1)権利濫用説、(2)受忍限度論、(3)新受忍限度論に分かれる、(ロ)物権的請求権説(ただし差止めについてのみ)、(ハ)人格権説、(ニ)環境権説、(ホ)民法七一七条による工作物の設置管理の瑕疵を根拠とする不法行為説(ただし損害賠償についてのみ)、さらに、(ヘ)Y会社の工場から発生する煤塵が政令で定める施設からの健康被害物質にあたる場合には、その生命・身体への侵害について大気汚染防止法二五条一項による損害賠償請求権が考えられます。
各説による要件事実とその証明責任は次のようになります。(イ)説では故意または過失(差止めについては不要)、権利侵害(違法性)、因果関係の存在について証明責任はXらに、加害者の責任能力についてはその不存在に関しYにあります。ただ違法性について、(1)説ではYの加害行為が権利行使の枠を超えることをXらが証明しなければなりませんが、(2)(3)説では原則的に侵害行為は違法だから、Xらは侵害の事実を証明すればよく、受忍限度内で適法だということは反証としてYの側で証明しなければなりません。また、(3)説によればXらは違法性を証明すれば同時に過失について証明したことになりその証明は不要となります。(ロ)説では物権、物権の妨害状態、違法性の存在についてXらに、(ハ)説では健康阻害の発生、因果関係についてXらに、(ニ)説では環境侵害、因果関係について(損害賠償請求のときは損害の発生についても)Xらに、旧説では工作物の設置または保存の瑕疵による損害の発生についてXらに、(ヘ)説では損害の発生と因果関係につきXらに、それぞれ証明責任があります。
過失とは結果の予見可能性をいいますが、被害者には高度の専門的知識のない場合がほとんどで、その証明が困難です。また、原因物質の長期にわたる排出、広範囲の拡散、損害の徐々の発生からして今日の科学的技術の水準をもってしても原因物質の解明が容易でないこと、原因物質排出施設の競合、高度の科学的知識、証拠方法を企業が独占していること等から因果関係の証明も困難です。証明の困難を克服するために、証明は蓋然性でよいとする考え方、間接証明の一種としての疫学的証明や、一応の推定(これによる証明の必要の相手方への移転を証明責任の転換と呼ぶことがある)理論の利用等の試みがなされています。

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