証明責任2

Xは、Yに対し貸金返還請求の訴えを提起しましたが、次の事実が争われました。
(1) XがYに五〇万円を貸与したか否か。
(2) 消賃貸借契約が公序良俗に反し無効であるかどうか。
(3) 期限の定めがあったかどうか。また期限がすでに到来しているか否か。
(4) その後、YからXに対してなされた五〇万円の授受が、本件貸金債務の弁済なのか、あるいは別口の代金債務の弁済なのか。
(5) 本件借権が消滅時効にかかっているか否か。
(6) その後、免除または期限の猶予があったか否か。
(1)ないし(6)の事実の証明責任は誰が負うのでしょうか。
売買代金債務を準消費賃貸借上の債務に改めた場合、その弁済請求訴訟において売買代金債務があったか否かが争われたとき、証明責任はいずれの側にあるのでしょうか。
客観的証明責任のほかに主観的証明責任という概念を認める必要があるでしょうか。

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通説たる法律要件分類説によれば、(1)貸与の事実についてXに、(2)公序良俗違背の事実についてYに、(3)期限の定めがあったという事実および期限到来の事実についてXに、(4)貸金債務弁済の事実についてYに、(5)消滅時効の事実についてYに、(6)免除または期限の猶予があったという事実についてYに、証明責任があります。
民法五八八条によれば旧債務(売買代金債務)の存在は準消費貸借の要件事実をなすのであるから、売買代金債務の存在については準消費貸借を主張するXに証明責任ありとするのが論理的です。しかし、これに対し、当事者の公平を根拠に、あるいは準消費貸借の制度は借主の便宜のためにあるのだから証明責任もこれに照応して分配すべしとして、売買代金債務の不存在についての証明責任をYに負わせる考えも強く主張されています。
法律要件分類説は、実定法の規定の仕方から客観的に証明責任の分配が決定されるとするのですが、この実定法の規定の仕方が証明責任分配との関係で必ずしも完全でない場合もあるし、明文に合致しないあるいは奇異な要件事実を認めることによって公平な証明責任を分担させることができることもあります。たとえば民法六一二条二項、自動車損害賠償保除法三条等における抗弁説。なおこれらの場合要件事実を明文に合わせて再構成し、その一応の推定と間接反証の問題としてとらえ、反証者に証明責任を負わせることが提唱されています。また原則規定と例外規定の区別が明確でないこともあるし、さらに、公害、医療過誤、製造者責任訴訟等において顕著にみられるように、当事者間の実質的不公平をもたらす点も問題です。
肯定説によれば、釈明権の行使として当事者に立証を促す場合、本証が不十分な場合反証を取り調べる必要がないこと等は訴訟中における行為責任としての証明責任のあらわれであるとみます。しかし、これらはいずれも客観的証明責任の反映とみることができ、さらに、立証を促すに際し必ずしも証明責任の所在を基準に行なわれているとも限らず、あるいは、先行的反証も認められることを思えば、主観的証明責任なる概念を認める必要はないでしょう。

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