自由な証明

Xら一五名は、Yが建築しようとしている五階建マンションによって日照を妨げられるとして、Yに対し三階を超える部分の建築工事禁止を求める訴訟を提起しました。
裁判所は、(1)当事者の訴訟能力、当事者能力、管轄その他一般的訴訟要件につき、手許にある訴訟記録等によって事実を認定し、(2)日照被害についても、裁判官自ら現地におもむいて見分したり、日照図、終日日射量、天空図などに関する科学的な経験則について、専門書をひもといたり、その道の専門家に私的に会って尋ねだりして事実を認定し、Xを勝訴させました。
Yは控訴して、「かかる事実認定を放任すれば、法定の証拠方法、証拠調べ手続を定めた趣旨を没却し、弁論主義をはじめ直接主義、口頭主義等の訴訟法上の諸原則を軽視し、手続の安定を書し、また私知による裁判禁止にもとり裁判の公正を書する恐れを生ずるから違法である。原審はすべからく、厳格な証拠調ベ、書証、検証、鑑定などにより事実認定をすべきであった」と主張しました。この主張は正当でしょうか。
設例のような場合は、迅速裁判の要請から、仮処分の申立てがなされることが多いが、仮処分裁判所が設例のような事実認定をして、仮処分決定をすることは許されるでしょうか。

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民事訴訟においては、請求の当否に関する事実の証明は、その客観性を保障するため、法律の規定に従った厳格な証明によることが要求されています。しかし、その他の事項(職権調査事項、任意的口頭弁論による手続、上告審手続など)については、法律の規律から解放された自由な証明が認められています。設例についてみれば、一般的訴訟要件の存在は職権調査事項であり、これを手許にある訴訟記録等によって裁判所が認定することは、なんら差し支えありません。しかし、日照被害について裁判官みずから現地におもむいて見分するのは検証に該当するが、現行法上職権による検証は認められませんから、これは違法であり許されない。経験則の認定については説が分かれます。通説は、これを法規に準じて考え、一般人として常識として知っている経験則は裁判所が当然これを知って適用すべきものであり、専門的知識に属する経験則は裁判所が訴訟外で知りえたところによって判定してもよいし、たまたまこれを知らないため証明が必要な場合は、自由な証明により認定しうるとします。有力説は、経験則のうち社会常識または裁判官の職業的知識に属しないものは、認定の客観性を保障するため、厳格な鑑定の手続により認定すべしとします。判例は、大判昭和八年一月三一日が通説の立場をとったのに対し、最判昭和三六年四月二八日は、「裁判官の通常の知識により認識し得べき推定法則の知きは、その認識のためにとくに鑑定等の特別の証拠調を要」しない、として有力説にしたがうが如くです。したがって、科学的な経験則の設例のような認定の仕方は、通説によれば許されますが、有力説によれば許されないことになります。
仮処分は任意的口頭弁論による手続であるから、全要証事実につき自由な証明が認められます。ただ、請求や仮処分の理由の疎明のための検証の能否については争いがありますが、実務上は見分として行なわれています。

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