裁判上の自白2

海上運送業者Yは、その船舶にXの貨物を積んで運送中、船舶が火災を起こして沈没し、貨物も沈んでしまいました。XはYに対し、運送契約の不履行に基づく損害賠償請求の訴えを提起しました。第一審でYは、本件貨物はXが回漕店主Aを代理人としてYに運送を委託した事実を自白し、Xが勝訴しました。これに対してYは、控訴し、第二審では、本件貨物はAが荷送人として運送を委託したと主張し、第一審でなした自白は錯誤に基づくものであるから取り消す旨陳述しました。第二審裁判所は、Yが第一審でした自白は真実に反するとしてその取消しを認め、Yを勝訴させました。
Xは上告し、自白の取消しは単に真実に反することを認定しただけでは足りず、自白が錯誤に基づいてなされたことを証明した場合に認められるにすぎないと主張しました。Xの上告は理由があるでしょうか。
次のような場合には自白の取消しは認められるでしょうか。
(イ) 相手方が同意したとき。
(ロ) 自白が相手方または他人の詐欺、脅迫等刑事上罰すべき行為によりなされたとき。

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X自身が運送契約の契約当事者である旨のYの陳述は、債務不履行に基づく損害賠償請求の要件事実の一つを肯定するものであり、裁判上の自白です。自白が真実に反するとして取り消すには、反真実の立証では足りず、自白が錯誤に基づいてなされたことをも立証しなければならないとされます。しかし、判例はこの原則を掲げつつ、反真実の立証があれば錯誤の存在が推認できるとして、錯誤立証の困難を緩和しました。この判例理論には賛否両説があります。錯誤の立証を要求する趣旨は、反真実を知らなかった場合にかぎり自白の取消しを許すことにありますが、判例の立場は実質上錯誤立証の要件を放棄したとみられるからです。設例では、自白の取消しを認めた第二審判決は反真実を認定するのみで、錯誤の有無については全く言及していないから、錯誤立証の要件を緩和する判例の立場でも、Xの上告には理由があります。
自白取消しの制限根拠は、取消しが訴訟の審理を混乱遅延させること、自白により一旦争いのなくなった事項について争いをむし返すことは相手方に対しても不信な行動だから禁反言を認めるべきことに求められています。したがって相手方の同意があれば、禁反言の趣旨に反しないとして取消しを認めています。また、自白が相手方または他人の刑事上罰すべき行為によりなされたときにも、自白の取消しが許されます。この場合再審の訴えの提起を要求することは、当事者の救済として迂遠であるばかりか、訴訟経済にも反するからです。再審の場合と異なり、当該可罰行為につき刑事の有罰確定判決は不要と解されています。
通説・判例のように建物売買の事実を間接事実と解すれば、自白取消制限の法理は妥当せず、無条件で取り消しうります。これに対し、主要事実であれ間接事実であれ不利益な事実を訴訟において承認した者は、自白取消しにつき同二の規制をうけるべきだとし、間接事実自白の取消しにも禁反言を強調する少数説によれば、反真実、錯誤の立証、相手方の同意、可罰行為の存在のごとき自白取消要件の具備が必要となります。

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