裁判上の自白1

Xは、Yより家屋の贈与を受けたと主張し、その引渡しと移転登記請求の訴訟を提起しましたが、贈与につき、書面によらなかった旨、自ら陳述しましたた。
Xは、先代AよりYに対する三〇〇万円の貸金債権を相続したとして、Yに対し同返還請求の訴訟を提起しました。これに対しYは、本件貸金債権はXの相続前にAからBに譲渡されていると争い、その事情として、AはBから建物を代金七〇〇万円で買い受け、代金の一部の支払いにかえて本件債権をBに譲渡したと陳述し、Xも建物の売買があったことは認めました。
YがXの陳述を援用すれば自白が成立するでしょうか。Yが援用しないときはどうなるでしょうか。
建物の売買があったことにつき自白が成立するでしょうか。
XからYに対し一三〇万円の貸金返還請求訴訟で、Yは「公正証書記載の一三〇万円につき消賃貸借が成立したことは認める」と陳述しました。その後Yが「消賃貸借は一九万円を天引きされたから、その分を控除した一一一万円につき成立したにすぎない」と陳述したのに対し、Xは自白に反する事実の主張であって許されないとしました。X・Yいずれが正しいでしょうか。

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裁判上の自白は、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述です。Yの援用が書面に依らない贈与契約を認めるにとどまるならば、Yの自白が成立します。YがXの陳述を援用しつつ、書面に依らない贈与契約としてこれを取り消す旨陳述すれば、Xの自白が成立します。この場合、Xの陳述を先行自白と称し、相手方の援用によって完全な自白となるのが原則ですが、本問のように独立の抗弁権の行使が問題になるときは、その前後によって有利不利の判断が異なるから注意すべきです。Yが援用せず逆に贈与契約の存在を否認するときは、自白は成立せず、Xの主張は依然として立証を必要とします。
自白対象たる事実は主要事実です。AからBへの債権譲渡の事実がAの債権消滅事由をなし、それゆえ主要事実ですが、A・B間の建物売買の事実は債権譲渡を推薦せしめる間接事実であるから、これについての自白は裁判所、自白当事者を拘束しません。主要事実に争いがあるのに間接事実の自白に裁判所を拘束することは、主要事実について認められた裁判官の自由心証を不当に制約するからです。もっとも、この通説、判例の見解に対しては反対説もあります。すなわち、建物売買の事実を典型的な間接事実であるアリバイと同列に置き、前者が後者と同じく主要事実(債権譲渡)を推認させる機能的類似性からこれを間接事実と解することは、アリバイのごとく具体的状況をはなれて範暗的に観念される間接事実の概念を何らの論証なしに拡張すると非難します。この見解によれば、「建物売買」のごとく具体的な生活事実経過における事実はそれ自作証明主題となりうるものであり、それゆえ裁判上の自白の対象となりえ、少なくとも自白の取消しは禁反言の趣旨から排斥されます。
判例は、一三〇万円の消費貸借の成立を認めた陳述も、一一一万円につき消費貸借の成立を認める趣旨の陳述も、「ともに本件消費貸借が成立するに至った事実上の経過に基いてYが法律上の意見を陳述したものと認めるのが相当であって、これを直ちに自白と目するのは当らない」としてYの陳述の変更を許しています。

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