示談後の後遺症と追加賠償請求

示談後に後遺症がでて、多額の治療費がかかったが改めて損害賠償を請求できるのでしょうか。
この場合は、改めて損害賠償を請求することができる、といってよいでしょう。常識から考えても、請求できなければ不都合ですし、法律的にみても、請求できる根拠は十分あります。示談書のどこかに、加害者は被害者に金何百万円を支払うから、それ以上の損害賠償請求はいっさいしない、という条項がはいっているのが普通ですが、こんな場合にも後遺症による損害を賠償してもらえます。いったい、どういう理由によってでしょうか。
いっさい請求しないと約束したのだから、たとえ当初予想もしなかったような後遺症があらわれたとしても、やむをえない、と一応考えられるかもしれません。しかし、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談の当時すでに予想されていた損害についてのものにすぎない、と考えるべきでしょうから、その当時予想できなかった思いがけない後遺症が発生した場合に、その賠償請求権までも放棄することは、普通の思慮を持つ人たちの意思に著しく反する、と思われます。特に、早急に出荷を埋め合わせなければならない被害者としては、どれくらい治療費がかかるか、修繕費はいくら、得べかりし利益をどの程度とするかなど、なかなか確定することが困難なため、わずかの賠償金で示談に応じることが多い、というような事情を考慮に入れますと、なおさら請求か認める根拠や必要性があるといえましょう。また、人間は、何事をするにせよ、その当時のあらゆる状況が大きな変化なしに当分は継続するであろうということを、とりたてて意識することなく、いわば無意識のうちに前提としているのですから、状況が変われば、それをできるだけ法律の面にも反映させるべきだ、というふうにも考えられましょう。裁判所の態度も、理由付けにかなりの差異は認められますが、結論的にはここに述べたのと同様の線をいっている、といえます。

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ところが、人間というのは悪魔的性質を一面においてもっているものですから、いろいろ悪智恵を働かせます。つまり、「今後いっさいの損害賠償請求権を放棄する」という条項が、判例によって無条件に有効とされるどころか、むしろ無効視される傾向にあることを知りはじめると、より手のこんだ特約によって、被害者に対する損害賠償額を値切ろうとするわけです。具体的にいいますと、「後遺症が発生したことによる損害を含めて、今後いっさい請求しない」という約束がしばしば行なわれます。こうした約束(条項)は今後もますます増えていくでしょうが、この約束もまた法的にみて難点を含んでいます。ただ、先に述べたような観点からだけでは、被害者も将来の状況の変化の蓋然性をある程度心得ていたのですから、ちょっと説明できかねると思われます。ところが、不利な示談に応じるの はいわゆる治療費にも事欠く、豊かでない階層が多いことを思いますと、なんとかこの条項を無効と判断しなければなりますまい。そこで考えられる理由付けとしては、次のようになると思います。えてして示談でカタをつけるのは、一日も早く現金のほしい被害者とか、法律と聞いただけでも頭が痛くなる法律に関して未経験の人たちが多いといえます。そうだとしますと、被害者側の弱点につけこんで、損害額を不当に値切ろうとした加害者の行為は、民法九〇条にいう「公序良俗」違反といえるように思われます。このようにみてくると、後遺症が出た場合をおもんばかって、加害者がそれによる損害の賠償を免れようとしても、しょせんは無益に帰するといえそうです。
念のため申しますと、事故から五年後ないし三〇年後に後遺症が出たときには、「損害と加害者を知った時より三年間、不法行為の時より二〇年間すぎると、損害賠償請求権は時効によって消滅する」という趣旨の民法七二四条との関係はどうなるか、という問題があります。民法七二四条にいう三年間というのは、加害者と損害を知った時から計算しますので、後遺症が出納めた時が基準となりますから、この点は問題ない、と思われます。しかし、自動車事故の時から三〇年後にむちうち症が出た場合には、事故の時から二〇年以上経っているから、損害賠償請求権が時効にかかって、賠償してもらえない、と考えられそうです。後遺症はずっとあとから出てくることが多いのに、このようにいわれたのでは、困ることになるでしょう。ですから、後遺症が出たときに、あらたに不法行為がなされた、と考えれば、三〇年後であれ五〇年後であれ、出てきた時を基準に、民法七二四条が適用されることとなりましょう。そんなことにすれば、加害者があまりにもかわいそうだ、といわれるかもしれません。しかし、被害者が賠償を請求するためには、かつての事故と現在の後遺症との間に原因、結果の関係があることを、証明しなければなりません。これはたいそうむずかしいと思われますから、加害者に酷だともいえないでしょう。むしろ、後遺症に悩まされている被害者には、できるだけこれに対してひろく賠償してもらえる権利を認めるべきだ、といわなければなりますまい。

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