遺産相続の際の扶養料の扱い

親が死亡しますと、遺言で別段の指定のかいかぎり、配偶者と子供達が、配偶者半分、子が半分で、子が二人いれば、四分の一ずつの相続分をもって共同相続します。ただし、生前に被相続人(この場合は親)から、嫁入仕度などをしてもらったり、分家などするにつき生計の資本として贈与を受けていた者があるときには、その貰った財産が、貰った者の行為によってなくなったり、価額の増減があったりした場合でも、被相続人の死亡時になお原状のままであるものとみなして、その価額を相続財産へ持ち戻す計算をして、相続分を定めることにし、生前贈与を受けた者と受けなかった者との不公平を避けるようにしています。
ところが、親から生前に何も贈与を受けず、大いに親を助けて農耕に従事したり、家業に従って親の収入を増加させ、間接的に、弟の独立のための生計資金や、妹の嫁入仕度に助力をした兄に対して、その親の財産の蓄積、維持について寄与したものを相続に際して考慮する規定は、民法に特に設けられていません。生前に贈与を受けた者のいわゆる特別受益の持戻しを認めるとすれば、寄与した財産の取戻しも認めないと不公平だ、というのが一般の学説です。そして、その根拠を不当利得に求めるのです。

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親を扶養していたという場合に、その扶養料を優先的に支払ってもらえるかというと、いろいろとむずかしい問題が考えられます。つまり、親の財産の増殖や維持に寄与したというのではなく、親の生存を維持したわけですが、もともと子は親を扶養する義務を負っているのですから、みずからの義務を尽しだのにすぎないので、親に対して不当利得の返還請求権があるとは考えられないわけです。また、誰か他人のために、あるいは他人に委任されて扶養したわけでもないので、事務管理とか委任の事務履行の出費として他の子たちに対して返還請求権があるともいえないのではないかという疑問があります。
戦前の旧民法下の判例や学説では、だいたいこのように考えられていました。ところが戦後に、兄夫婦と折合いが悪い老母を引き取って扶養している妹が、その扶養料の分担を兄に求めた事件において、兄の方は、老母に自家へ戻れといっているのに、勝手に母が戻らず妹夫婦に厄介になっているのであり、妹は勝手にみずからの扶養義務を履行したにすぎないと抗弁しましたが、判決は、もし返還や分担を求めえないとすれば、情の深いものほど損をし、冷淡な者が得をすることになって不当、不公平だといって、求償分担の請求を認めることになりました。
今日、親を誰が引き取って世話をすべきかについて明らかな規定はありませんが、少なくとも金銭をもって親の扶養に協力すべき義務を、子はみな負っているのです。そのどれだけを分担するかについては、家庭裁判所で審判によって定めてもらうべきですが、子は各々その資産、収入に応じて親の扶養を分担する義務があるものと考えられます。
三人の男女の子があり、次男や長女は裕福な家へ養子に行ったり嫁入りしたりしていながら、なんら親の扶養科を分担したことがなく、長男が苦労して独りで親を扶養してきたのに、今、親が死亡したので、次男や長女がその相続分があるといって請求してきた場合には、長男は、独りで負担してきた扶養料のうち、次男や長女の負担すべき分だけを償還請求する権利かあると解してよいと思います。遺産の中には、実は、長男が扶養しなければ、その分だけ生活費に費消しなければならなかったものも含まれており、長男の扶養によって残存するにいたった財産もあるといえるからです。また 三人が共同して負担すべき扶養料を長男が支払ったという意味で、一種の共益費用でもあるといえますから、その遺産を、負担額返還まで留置する権利があり、また遺産の上に先取特権をもつ、というように解しうると思います。

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