夫がした借金に妻も責任を持つか

旧民法では、家庭の平和とか、女性の能力の低さあるいは男尊女卑の思想によって、妻が重要な財産上の行為をするについて夫の許可を必要とする妻の無能力制度が認められており、夫は妻の財産に対して管理権をもち、妻の衣服や身廻品にまで夫が管理権を主張して、管理権の濫用などといわれたことかありました。しかし、現在の民法は、男女平等の原則にもとづき、夫婦各自の特有財産を認め、管理も別個であるという夫婦別産制をとっていますので、夫婦それぞれの所有財産は、各自が管理、処分する権利をもち、また思い思いに独断で借金をすることができます。各自が働いて得た所得や、他人から贈与を受けたり、親や兄弟の死亡により相続した財産は各 自の財産であり、自分の借金は自分の財産で弁済する責任を負う代わりに、夫の借金について妻が責任を負うことはありません。したがって、夫の借金で妻の財産が差し押えられることはなく、その逆もないわけです。
ただ実際問題としては、夫婦どちらの財産であるか不明な場合もあり、その場合は共有と推定されます。また、夫の名義になっていても、実は妻の所有である財産もあるわけですが、夫の債権者は、とりあえず夫の財産として執行してくるということもあります。その場合は、妻は自己の所有財産であることを主張、立証して、強制執行に対する第三者異議の訴えを起こせばよいでしょう。

スポンサーリンク

お金を借りる!

しかし、いわゆる日常の家事債務については、夫婦は連帯して責めに任じなければなりません。すなわち、夫婦が家庭生活を営んでいくのに必要なため夫あるいは妻が第三者と契約したことにより負担する債務、例えば子どもの教育費、生活日用品、食料品の買入契約、家政維持のために必要に迫られてした金銭の消賃貸借契約(借金)などにより生ずる債務については、その契約を結んだ夫あるいは妻のいずれか一方だけが責任を負うのではなく、双方が連帯して責任を負います。したがって、信用を 与えた者は、契約した一方、たとえば夫だけでなく、妻をも訴えることができ、差押えもできます。どのような債務負担が日常の家事に関するといえるかは、その夫婦の営む家庭の家計規模や、契約した事柄などによって認定しますが、日用食品や家具、冷蔵庫の買入れなどは、日常の家事であるとしても、ピアノの購入、娘の結婚調度品の買入れ、将来住宅を建てるための土地買入れなどになると、日常の家事とはいえないですから、妻がこのような契約をする代理権を夫に与えたと認められるような事情があって、契約の相手方が、夫が妻の代理人だと認めるのも無理のない場合のほかは、妻が債務を負わされることはなく、自分の財産を夫の債権者から差し押えられることもありません。
そして、夫婦の間でいろいろな契約を結ぶことは自由で、妻は、夫の借金の保証人になったり、夫と連帯して債務を負担することができ、また夫の借金の担保として債権者のために自分の財産に担保権を設定することもできます。このような場合は、夫が借金を支払わなければ妻はみずから責任を負わなければならず、自己の財産が担保権の実行のため競売されることかあります。
このような次第ですから、夫の債権者に妻の財産が差し押えられることをおそれ、あるいは妻が夫の債務をも支払わなければならないと誤信して、それを免れるために、表面上だけの協議離婚などをすることは、あまり意味のないことです。しかし、夫が支払わないと、詐欺や横領などで告発され、罰せられるというような場合もあり、そんな場合に夫を犯罪人としないために、妻がやむをえず支払うという事実上の支払強制を受けるということはいえましょう。

お金を借りる!

婚約を実行しない相手に責任をとらせたい/ 内縁の妻と労災保険、損害賠償/ 夫がした借金に妻も責任を持つか/ 別居中の夫に生活費を請求したい/ 離婚の際の親権者/ 財産分与、慰謝料の請求/ 離婚のときの取り決めが実行されない/ 結婚していない女性との間に生まれた子/ 弟の子を養子にする手続き/ 誰が親の扶養をするか/ 内縁の妻や再婚の妻の相続権/ 死亡退職金、遺族年金、生命保険金も相続財産か/ 親の借金や保証も相続するか/ 遺産分割の方法/ 遺産相続の際の扶養料の扱い/ 遺言書の作り方/ 自動車事故にあった場合にどこに相談すればよいか/ 賠償の対象となる損害の種類/ 示談後の後遺症と追加賠償請求/ 加害者が不誠実なので調停申立したい/ 被害者が直接、保険金を受けるには/ ひき逃げ事故での被害者の救済/ 業務中の事故はどの保険で請求するか/ 化学工場の悪臭/ 建設工事の騒音や振動/ 隣りの建物による通風や日照妨害/ 地主が私道に車庫を建てた/ 類焼による損害を火元に弁償してもらえるか/ 預けた品物が紛失破損した場合の業者の責任/ 公営の保育園等で子供がケガをした場合/ 子供の喧嘩でケガをしたり、犬に噛まれた場合/ 盗まれた盗品が見つかった場合/