時効の援用権者

親類の者が借金する際鎖まれて保証人になりましたが、幸い、その債務は時効にかかったそうですが、訴えられたような場合、保証人も、時効にかかっていると主張することができるのでしょうか。
判例では、時効の効果は時効の完成と同時に絶対的に発生し、援用は裁判上の攻撃、防禦方法だと解しております。それに対し、時効の利益を受けるという意思表示、すなわち援用をすることによって権利の得喪を生ずるのだと解する学説もあり、時効の援用を法定証拠の提出とみる学説もあります。
このような基本的な考え方のもとに、時効の援用をなしうる者(時効の援用権者)についてどういう考え方をしているかを、考えていきましょう。判例は、「当事者(援用権者)とは時効に因り直接に利益を受くべき者、即ち取得時効に因り権利を取得し又は消滅時効に因り権利の制限若くは義務を免るべき者を指称す。故に時効に因り間接に利益を受くる者は所謂当事者に非ず」としております。非常に限定的に解しているといってよいでしょう。
それに対して、前述しました学説は、判例よりは弾力的に、ゆるく解釈しております。例えば時効によって直接権利を取得しまたは義務を免れる者のほか、この権利または義務にもとづいて権利を取得し、または義務を免れる者をも包含する、と解しているというようです。

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判例をみていきますと、保証人は時効を援用することができるとしています。つまり、「保証債務は主たる債務者に代りその債務を履行するに在るを以て、主たる債務が時効に因り消滅すれば保証債務も消滅すべきは当然にして、保証人は主たる債務の時効に因り利益を受くべき者なれば同条に所謂当事者として主たる債務の時効を援用することを得る心のなり」としております。
学説も、この結論にはみな賛成しております。そうしますと、本問では、保証人は時効にかかっていると主張でき ます。
保証人が時効の援用をしますと、主たる債務は保証人に対する関係ではじめに遡って消滅します。保証債務の付従性の理論により、その消滅によって従たる保証債務もはじめに遡って消滅します。
しかし、援用の効果は相対的ですから、主たる債務者に対する関係で主たる債務が消滅したのではありません。したがって、主たる債務者が自らも債務を免れるためには、自らも援用しなければなりません。
時効の援用をなしうるかどうかについて他に問題のあるものについて述べましょう。
連帯保証人については、民法四三九条の適用により時効の援用ができると解されております。連帯債務者の場合もそうです。
物上保証人が債務者の消滅時効を援用しうるかについては、判例はかつて否定しておりましたが、最高裁はこれを覆しました。ただ、最高裁は、援用権者は、時効によって直接に利益を受ける者に限るとした理論を改めたのではありません。物上保証人も直接に利益を受ける者だとしているのです。
詐害行為の受益者が債権者の債権の消滅時効を援用できるかが問題になりますが、判例は援用できないといいます。これに対して、多くの学説が反対しております。
ところで、債権者が債務者の有している消滅時効にかかった債権について、時効を援用することができるかどうかは問題があります。第一に、債権者は債務者の時効を援用したために、自分が負担していた債務を免かれるという直接の利益を得るのではなく、それによって債務者の責任財産が減少するのを防ぎ、債権の保全がはかられるといういわば間接の利益を得るという形になるからです。
第二に、時効の制度は、一方において客観的に社会秩序の維持という役割を果たすと同時に、他方において、当事者の道義心を尊重するというたてまえをとっております。つまり、時効を援用するか、しないかを当事者の意思にまかせているのです。 そうだとすると、債権者Aの時効援用権を他人がかわって行使することができないのではなかろうかという疑問がおこります。第三に、前とは逆に、債務者の責任財産が滅少したのでは、債権者の利益が害される。したがって、債権者の保護のために、援用権の代位行使は認めるべきであるということも十分理由のあることです。このような事情の心とで、学説は認めるべきだという者が多く、下級審判決心ほとんどが肯定しています。

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