時効の中断

消滅時効の進行が、ある一定の事由によって、中絶されてしまうことがあります。これを時効の中断といいます。つまり、債権が時効にかかるのを防ごうとするには、この時効中断の手段に訴えればよいということになります。
時効の中断を認める根拠はどこにあるのでしょうか。元来、時効の制度は、権利を行使しない者を保護しないとい う緊急罰的な考え方、期間の経過による証拠をあつめることの困難さ、永続した事実状態の尊重による社会秩序の維持、などを根拠とすると説かれております。ところが、 消滅時効の進行中に、権利者が権利を行使したり、義務者が義務を承認すると、時効の制度を認めた根拠が覆されるされることになります。つまり、権利の上に眠る者でなくなり、当事者間の権利、義務が明確になりだことになるわけです。そこで、このような事由があると、消滅時効の進行を中断させることが必要になってくるのです。
逆にいうと、債権者がその有する債権が消滅時効にかからないようにするためには、時効中断の事由に訴える、つまりそういう方法をとればよいということになります。

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民法は一四七条で、中断事由として、請求、差押え、仮差押えまたは仮処分、承認、の三つをあげています。このうち、請求と差押えは、権利者の権利行使行為であり、承認は義務者の義務承認行為です。
裁判上の請求とは訴えを提起することをいいます。この訴えは、金を払えという給付の訴えだけでなく、何万円払えという債権があることを債務者に承認させる確認の訴えでもよいのです。また、相手方が訴えてきたので反対にこちらから応請求した場合でもよいし、債務者の提起した債務不存在確認の訴えに応訴して、債権の存在を主張することも裁判上の請求として中断事由になるとされています。これに反し、債権者が債務者の財産処分行為を詐害行為を理由に受益者を被告として取消しの訴えを起こして勝訴しても、その債権につき時効中断の効力は生じない、とされ債権者が債権の一部を訴求してもその残部につき時効中断の効力が生じないとされております。もっとも、後者については、残部については、訴訟係属中、催告としての効力が持続するという有力な反対説があります。
このような訴えの提起も、訴えが却下され、あるいは取り下げられますと、中断の効力を生じなかったことになります。
債権者が弁済を求める簡易な手続として認められる支払命令も中断事由です。ただし、裁判所が支払命令を出してくれ、かつ債務者がこれを争わないために、債権者がさらに進んで仮執行の申立てをすれば債権を実行できたはずであるにもかかわらず、これを放任したときは、時効中断の効力は生じません。
裁判所に和解を申し立て相手方を和解のために呼び出してもらうこと、および相手方と相携えて和解してもらうために裁判所に任意出頭することも中断事由となりますが、相手方が出頭しないか、または和解不調に終われば中断の効力がないことになりますから、権判者は1カ月以内に改めて訴えを提起して中断力を維持しなければなりません。宅地、建物、農事、商事、鉱害などに関する調停の申立ても同じく時効の中断事由になると解すべきです。調停が不成立に終わっても二週間以内に訴えを提起すれば、調停の申立ての時に訴えの提起があったものとみなされますから、その限りで中断力が認められます。
債務者が破産したときに配当を申し出ること、すなわち破産手続参加も中断事由ですが、債権者が参加を取り消しまたはその請求が却下されたときは中断力がありません。なお、破産宣告の申立てにも同様の効力を認めるべきですし、破産手続と類似するもののうち、債務者について和議手続が開始したときの和議手続参加に関しては明文がありますが、明文のない民事訴訟法による配当要求らこれと同視してよいと解されております。
以上の裁判上の手続による中断を強い中 断事由といいますが、そのほかに、弱い中断と称される催告があります。
催告は債務者に対して履行を請求する債権者の意思表示をいいますが、書面でも口頭でもよく、なんらの方式をも必要としませんが、証拠を保全する意味で内容証明郵便または配達証明郵便でするとよいでしょう。内容証明郵便というのは、ある人にあることを通知したという証拠を残すために、郵便局でそれを証明してもらう郵便です。三通作り、一通は相手に送られ、一通は郵便局に保管され、一通は郵便局の証明印がついて差出人に返されます。
催告による中断は弱く、催告の後、六カ月以内に、いままで述べてきた強力な中断事由、すなわち裁判上の請求、あるいは執行行為をしなければ、中断の効力がないものとされます。したがって、この方法は、時効の完成まぎわに債権者が強い中断事由をとる余裕がないときに利用されるのです。
一度催告して六ヵ月以内にまた催告をするというように催告を繰り返しても中断の効力がありません。
なお、債権の一部について訴求した場合に、残部について訴訟係属中、催告の効力が持続すると解すべき説があります。
差押え、仮差押えおよび仮処分、これらはいずれも強力な権利実行行為として中断力があります。差押えは、確定判決その他の債務名義 にもとづいてなす執行行為であり、仮差押え、および仮処分は、強制執行の不能またはいちじるしく困難となるおそれがある場合に、執行機関によってこの強制執行を保全する手段です。
ただし、これらの行為が権利者の請求によりまたは法律の規定に従わないために取り消されたときは中断の効力はありません。なお、例えば債権者が債 務者以外の者の提供した不動産上の抵当権を実行したようなときは、これを債務者に通知してはじめて時効中断の効力を生ぜしめることができます。
時効によって利益を受ける者が権利の存在を承認するような行為をすることが時効中断の事由となります。義務者がこの承認をしてくれれば中断事由として一番簡単です。
承認は他の中断事由と異なり、なにも形式上の制限がありません。証文を書き替えたり、一部を弁済したり、利息を支払ったり、文払いの猶予を求めたりすることは、いずれも承認となります。
承認は相手方の権利の存在を認めるだけのことですから、承認する者が、その中断される権利を有すると仮定した場合に、その権利について処分する権限または能力を有する必要はありません。
時効中断の効果は、すでに述べたところからもわかりますように、それまで続いた時効の効果がまったく効力を失うということです。 したがって中断事由が終了した後になお時効状態が継続するときは、その時から改めて新しい時効が進行を始めます。いつからこの時効が進行を始めるかは、それぞれの中断事由について決しなければなりませんが、裁判上の請求については、裁判の確定する時まで中断の効力は継続し、その確定の時から新しい時効が進行することは規定されております。
時効が一度中断して、その後に再び進行する場合にも、この新しい時効の期間は常に本来の時効期間と同一だと解されております。二年の消滅時効にかかる債務を承認しますと、時効期間はこの承認の時から二年です。ただし、この考え方は、中断が確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによってなされた場合だけは変更され、一律に10年の消滅時効にかかるものとされます。本来二年の時効にかかるものも10年になるのです。
なお、時効中断の効力は中断事由に関与した者すなわち当事者とその承継人との間でだけ効力を生じます。たとえば、債権者甲、債務者乙、物上保証人丙としますと、甲が乙に対し訴えを提起して消滅時効を中断しても、丙には何の影響も与えず、丙に対しては中断されずに時効は進行するのです。

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