時効期間

民法では、債権の消滅時効期間は10年が原則となっておりますが、商法では、商行為によって生じた債権の消滅時効期間は、商法に別段の定めがある場合または他の法令に一層短期の定めがある場合を除いて、一律に5年とされております。商法で別段の定めのある場合と、他の法令に一層短期の定めのある場合を、次に例示します。
運送人の取扱責任、1年、海上運送の場合も同じ
運送取扱人の委託者、荷受人に対する債権、1年 
運送人の委託者、荷受人に対する債権、1年
客の来集を目的とする場屋の主人の責任、1年
質入証券所待人の権利、1年あるいは6ヵ月
倉庫営業者の責任、1年
保険金額支払いの義務、保険料返還の義務、2年
保険料支払いの義務、1年、生命保険の場合も同じ
船舶所有者の債権、1年、海上の旅客運送の場合も同じ
共同海損または船舶の衝突によって生じた債権、1年
請負人の工事に関する債権、3年
生産者、卸売商人および小売商人の売却産物および商品代価の債権、2年
運送賃ならびに旅店、料理店などの宿泊料、飲食料、1年
この例示をみてきますと、その範囲は広く、抽象的な5年の商事時効の適用される範囲は比較的狭いことがわかります。せいぜい商行為たる消費貸借による債権のごときものを考えるのに過ぎないのではないかと考えられます。ところで、商行為によって生じた債権の消滅時効期間を、普通の債権の10年より短い5年としたのは、企業取引の迅速性にこたえ、早く関係を結了させた方がよい考えたからです。
このように、商行為たる消費貸借による債権は商法五二二条の適用を受けるのでいったいどういう人が貸主になったときがそれに該当するのでしょうか。
商法五〇二条八号は営業的商行為になるものとして銀行取引をあげております。銀行取引といわれるゆえんは、一方において、金銭または有価証券を受けいれ、他方において、これを必要とする者に融通する場合、つまり、いわゆる受信行為と与信行為との両者が関連するところにあるといわれています。もっと具体的にいいますと、預金その他の方法で収受した金銭を他人の需要に供するというような媒介行為に該当するのでなければ銀行取引といわないということです。
そこで、貸金業者が金銭を貸した場合に適用があるかどうか問題になります。判例は、貸金業者は自己資本のみで貸付をなすから、銀行取引にあたらないとします。したがって普通の債権として10年の消滅時効にかかります。その貸金業者が届出を出して受理された者であっても同じことだといいます。また、質屋営業者の質物をとって貸付をなす行為はどうかということが問題になります。判例は、この場合も、不特定多数人から受けいれた資金をもってするのではないから銀行取引にあたらないといいます。この場合も同じく10年の時効にかかることになります。
このような判例の見解に対し、古い形式論だという批判も強いようです。原始産業たる鉱業にも商法が適用されている現在、批判に賛成したいものです。商法五二二条の適用がある商行為といいうるためには、行為の当事者双方にとって商行為たること を要するでしょうか。判例は、一方的商行為でよいといいます。つまり、一方にとって商行為であれば足りるというわけです。したがって、貸主が商人でなくとも借主が商人で、その行為が商人にとって商行為であればよいことになります。

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